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side.千夏
びっくりした。
裕二の声がするのに、あったかいのに、こわくなった。
後ろが変な感じがして、でもそれは知ったことのある感じで、きがついたら、目の前がまっしろになった。
しってる。
ご主人様のこえ。
『大人しくしろ』
ひゅう、と喉が鳴るのがわかった。
このあとにやってくる痛みは、しってる。
「ひ、やっ、やだあっ!」
いたいのと、きもちわるいのと、あついのと。
もう、いやだったから。
めちゃくちゃに暴れると、からだをもちあげられて、後ろからだきしめられた。
ひっ、と息がつまる。
「千夏、大丈夫、大丈夫だからね」
「っい、や、」
「もう終わったよ、痛いこと、もうないから」
だきしめる大きな手と、柔らかいにおいと、やさしい声。
ご主人様とは、ちがうもの。
あなたは、だぁれ?
「こわくない、俺がいる」
ぼくのこころを、おちつかせてくれる。
ぼくは、その人を、しっている。
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