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ぴぴぴ、と体温計が鳴った。



「38.8か……」



こほ、と千夏が小さく咳をした。
しゅんとしてしまったので、安心させるように俺は笑って、そっと頭を撫でた。

千夏が熱を出してから、今日で三日になる。
ただの風邪だろうとのことだったけれど、免疫力のない千夏は、風邪を長引かせやすい。
気管支炎や肺炎などに悪化しがちなので、早く熱を下げたいところ。

薬で一度は下がっても、すぐに上がってしまうのだ。



「なんか食べよっか。お腹、すいてる?」



聞くと、ふるふると首を横に振られた。

ただでさえ少食な千夏だ、風邪になるともっと食べなくなる。
無理に食べさせても、吐いてしまう。
ここ数日だけでも、少し痩せてしまったのがわかるくらいだった。



「きつくない?」
「ん……だい、じょぶ」
「もう少ししたら、着替えよっか」
「ん……」
「早く元気になって、いろんなことしよ」



千夏は汗をかきながら、少しだけ笑った。

風邪の悪化にしても、食欲のなさにしても、早く治ったがいい。
困ったな、と心中で呟いた。



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