3
side.航
「びっくりしたね、怖かったね、」
ぽんぽん、と背中を叩いて抱き締める。
奈津は未だに泣き続けていた。
最近は落ち着いていたから、反動なのだろう。
「いたい、の、やぁ……」
「痛くない、もう痛いことないよ」
「や、いたい、」
「どこが痛い?」
「叩くの、いたい……」
痛みの記憶が、あって。
気休めにしかならないだろうけれど、俺はそっと頭を撫でた。
「ここ?俺が撫でてあげるからね」
けれど、俺は奈津がどんな風に、どこを痛め付けられたのか、知らない。
「あたま、たたくの……おなかも、うで、ぎゅーってされて、」
幼くなってしまったような、奈津の言葉がぽつぽつ続く。
「やって、言った……にげたのに、いたいの、ずっといたい」
「……喋んないでいいよ」
「ちが、血が、でるの、っ」
無意識なのか、奈津はカリカリと、左腕の傷を引っ掻き始めていた。
「俺が、治す、からっ……」
腕をとって、傷だらけのそこに、キスをした。
びくっ、と奈津は腕を引くけれど、俺は離さなかった。
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