2
side.航
「奈津っ……」
マグはキッチンに置いたまま、リビングに向かった。
ソファからずり落ちたような格好をした奈津が、床にぺたりと座っていた。
「あっ、や、やっ……」
泣いて、震えて、耳を塞いでいた。
一点を、じっと見つめたまま。
つけっぱなしのテレビ。
そこに映るのは、
「見なくていいっ」
遮るように、奈津の頭を抱えた。
片手でリモコンを探して、荒っぽく消す。
しん、と部屋が静まった。
「や、やだ、こわい、っ」
「ん、大丈夫だから、俺がいる」
ガタガタ震えている身体は、完全に恐怖に包まれている。
なんてことない、ドラマかなにかの暴力シーンだった。
それさえも、奈津を怖がらせるには、十分なきっかけになる。
映画を観るときも、事前に調べたりしていた。
気を付けていたはずなのに、迂闊だった。
前へ top 次へ