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side.航



「奈津っ……」



マグはキッチンに置いたまま、リビングに向かった。
ソファからずり落ちたような格好をした奈津が、床にぺたりと座っていた。



「あっ、や、やっ……」



泣いて、震えて、耳を塞いでいた。
一点を、じっと見つめたまま。

つけっぱなしのテレビ。
そこに映るのは、



「見なくていいっ」



遮るように、奈津の頭を抱えた。
片手でリモコンを探して、荒っぽく消す。
しん、と部屋が静まった。



「や、やだ、こわい、っ」
「ん、大丈夫だから、俺がいる」



ガタガタ震えている身体は、完全に恐怖に包まれている。

なんてことない、ドラマかなにかの暴力シーンだった。
それさえも、奈津を怖がらせるには、十分なきっかけになる。

映画を観るときも、事前に調べたりしていた。
気を付けていたはずなのに、迂闊だった。



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