3
 

先生のお皿を割ってしまった。
また、迷惑をかけてしまう。

先生に相応しい人になりたくて。
頑張っても結局、迷惑かける。
嫌だ、僕は、先生の隣にいたい。

なんでこんなことも出来ないんだ、と。
ごめんなさい、がいっぱいになる。



「雨宮っ」



先生の声に、はっとした。
目が合って、優しく頬を撫でられた。
右手に握っていた破片を取り上げられて、座ったままそっと、抱き締められた。



「大丈夫だから、な?」
「っ……ごめん、なさい」
「いいよ、皿の一枚や二枚。怪我、してねぇ?」



ぽんぽん、と背中を叩かれる。
なんだか温かくて。
眠たくなってくる。
頭がぼやーっとする。

あ、そういえば、熱、



「……もしかして、」



体温の高いことに気づいたのか、先生が額に手をあてた。
ひんやりしていて、それは気持ちいい。



「おまっ……ねつ、」
「う……」
「なんで言わなかっ……いや、」



割れたお皿はそのままに、先生は僕をひょいと抱えあげた。
寝室に連れていかれそうになって、僕はばたばたと暴れた。



「や、下ろしてっ……下ろして、くださっ」
「っちょ、大人しくしてろ」
「いやだぁー……っ」



涙が出てきた。
自分が何を言っているのかわからなかった。

先生から必要とされる人になりたい。
迷惑をかけたくない。
相応しい人になりたい。

つっかえつっかえ、泣きわめいた。



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