2
 

side.譲



忙しいなら呼ばなきゃいいのに、少しでも傍にいてほしいと思ったのは、俺の我儘だった。



「………」



ちらりとキッチンを見ると、皿洗いをしている雨宮の後ろ姿。
外出もやめて、部屋で食事を取った。
料理も片付けも、雨宮がしてくれた。

完璧だな、と思う。
俺が雨宮に望むものは何もなかった。

傍にいてくれれば、それで、良かった。



(………なんか)



新婚みたいだな、とか思いながら。
少しだけ、頬が緩んだ。
そのとき、



「………っ雨宮」



ぱりんっ、と大きい音がした。
咄嗟にキッチンを見ると、床に白い皿の破片が散らばっている。



「っごめ、なさっ……」



慌てたように、雨宮がしゃがみこんで破片を拾おうとする。



「っばか、危な……」
「ごめんなさい、ごめんなさっ」
「雨宮っ」



なに、混乱してるんだ。
大きな目に涙をいっぱいためて、必死に破片をかき集めている。
その手を取って、名前を呼んだ。
びくっと身体が震えて、涙が一筋、こぼれた。



前へ top 次へ

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -