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クラスに助けてくれる人はいなかった。
そもそも、友達なんていなかった。
僕と関わったら、虐めの対象になるから。
「っげほ、っあ゛!」
「南ちゃん、こんくらいで気ぃ失わないでよ?」
放課後、僕は教室で殴られていた。
昼休みに頼まれた飲み物を、重さに耐えられずに溢してしまったから。
……しかも、佐原くんの制服に。
そのときは、佐原くんは怒ったのか無言で立ち去って、仲間はそれについて行った。
安心するのも束の間、今はこうだ。
「お前さ、いい加減にしろよ」
「佐原にんなことして、ただじゃ済まねぇぞ」
僕は床に這いつくばっていて。
お腹を蹴られたり、頭を踏みつけられたりしている。
痛みは、もう麻痺している状態。
「あいつが機嫌悪くなると手ぇつけられねぇんだからな……」
怒りと、焦燥が混ざった声。
僕のせいなの?
なんで、僕なの?
とろいのは知ってる。
見てて苛々するのも知ってる。
放っておけばいいじゃん。
僕は何もしないよ。
気配を消しておくよ。
「げほげほっ……ッ」
僕の存在って、何?
気づいたら、みんないなくなっていた。
僕はぼろぼろのままで、立つこともままならない。
一度踏み出した足は、震えてバランスを取ってくれなくて。
机に身体を強か打ち付けて、倒れ込んだ。
(う、ごけ、な……)
身体中が痛い。
息をするのもきつい。
死ぬのかな、って。
それも悪くないのかな、って。
バタバタと、足音が聞こえた。
「っ南!」
教室に一人現れたのは、息を切らした佐原くん。
どうして、そんなに急いでるの?
僕は逃げたりしないよ?
早く、殴ればいいよ。
そのまま、意識を失った。
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