群雄割拠する戦国乱世からの来訪者が一気に6人も増えた。
半兵衛と天音を入れると、現在この家には8人の人間が生活している事になる。

そんな大所帯の大家族で、鍋を囲んでいたときのこと。
奥州では熊や猪も鍋に入れて食べたという話になった。

「おおっ、熊鍋に猪鍋でござるか!」

「ああ、ごくたまにだがな。いつも野菜ばっかりなんで、野郎共が大喜びで食ってたぜ」

「熊か……」

箸を止めた半兵衛が眉をひそめる。

「以前、稲葉山城に来る途中に襲ってきた熊を秀吉が素手で殴り倒して獲ってきた事があってね、厨で捌かせてその日の夕餉に出したんだ」

「あー…豊臣の旦那かぁ…」

佐助はそれこそ熊よりデカいのではないかという体躯の持ち主を思い浮かべた。
襲う相手を間違えたとしか言い様がない。

「秀吉は美味いと言って喜んでくれたけど、僕はどうもあの臭みが受け付けなくて困ったよ。秀吉が獲ってきたものでなければ口にしなかっただろうね」

「ああ、分かります。熊とか猪とかの肉って独特の臭みがありますよね」

半兵衛の湯飲みにお茶を注いだ天音は頷いた。

「私の知り合いが仕事で山奥に行ったときに、遭遇した熊を外科手術用のメスで首を斬り落として一撃で仕留めて、そのまま野外で調理して同行者に熊鍋をふるまったんだそうです。美味しかったらしいけど、どうやってあの臭みを取ったんだろうって不思議で」

「そりゃたぶん、時間をかけて丁寧に下処理をやったんだろうな。下処理が充分にしてあれば熊肉も臭わねぇ。そいつは料理人としてもいい腕の持ち主だったんだろう」

政宗の皿に野菜をもりもり入れながら小十郎が言った。
政宗は嫌そうにしている。



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