そこで目が覚めた。
目を見開いて佐助はガバッと起き上がる。

「……夢……?」

そうか、夢か。なるほど。確かにあり得ない事ばかりだった。
当然、松永久秀がこの世界に来たなどという事実もない。
何もかも夢だったのだ。
佐助は心の底から安堵した。

隣の布団では、まだ幸村が眠っている。
もう少ししたら起きるだろうと、声はかけずに佐助は部屋から出た。

「おはよう佐助」

洗面所で顔を洗って台所に向かうと、身支度を済ませた天音が階段を降りてきた。

「おはよ…」

「どうしたの、顔色悪いよ。風邪ひいた?」

天音がぺたりと佐助の額に手の平をあてる。
柔らかい手の平の感触は気持ちがいい。

「ん、熱はないみたいだけど…疲れが出たのかなぁ。家事ずっと手伝ってくれてるもんね。今日はお休みしてのんびりしてていいよ」

「ああ…うん、いや、俺様なら平気だよ」

微笑んでよしよしと頭を撫でてくる天音に、自分自身に言い聞かせるように佐助は笑って言った。

おかしな夢を見てしまったが、大丈夫。いつもの朝だ。
もうすぐ幸村が起きてきて朝の鍛錬を始めるだろうし、半兵衛と小十郎も起きてくるはずだ。
元就は今頃自分の部屋で日輪を参拝中に違いない。
それから元親がやってきて、その後朝餉が始まる。


「おや、早いですね」


ひやりと冷たい男の声がした。
天音がエプロンを身につけながらそちらを振り返る。

「おはようございます、光秀さん」

揺らめくような歩みで廊下をこちらにやってきた男が、佐助を見て唇の端を吊り上げた。

「どうしました。まるで悪夢でも見ているような顔をしていますよ」



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