御神籤様の言う通り


あけましておめでとうございます。ソロぼっち深夜初詣キメて帰ってきたら、私のベッドで知らない野郎が寝てました。神よ私が何をした。

「な〜……んかこう、見覚えがあるような……」

何故かシャツにボクサーパンツだけの格好で爆睡している男を、考えてる顔の絵文字ままのポーズで眺める。
しかし私の布団カバーがピンクの花柄なもんだから絵面がひどい。この男、起きて自分の状況理解したら泣きやしないだろうか。多分三十代前後くらいだろうに、こんなファンシーベッドで寝てんの面白すぎる。

さて状況確認に戻ろう。男は赤茶がかった暗めの髪色で、顔立ちは見たとこ悪くない。下瞼にはくっきりとした隈があって、人間の目元ってこんな黒くなんのか……人体の神秘……としばし見入ってしまった。
変わらず見覚えがあるような気はするんだが、あと一歩で記憶に届かない。鎖骨の辺りまではきてる。あとちょっとで思い出せそうなんだけど。割と最近見たはずだぞこの顔。

……ていうかこれ、神からのプレゼント的なアレなのかな。
もしや初詣先の神を、その歳でわざわざ年明け直後にぼっち初詣ておま……みたいな気持ちにさせてしまったんだろうか。そういえばおみくじも大吉だったな、と財布から引いたばかりのおみくじを取り出す。
改めて読み返せば、恋愛のところに衝撃の出会いあり的なことが記されていた。うんまあ確かに衝撃的な出会いだけども。だから誰なんだよこの男はよ。知ってる男寄越してくれよ神。

「ゔ、うぅん……」
「ッ――!?」

唐突に男が唸り、寝返りを打ちながら片手をぱたぱた動かし始めた。
な、なに……こわ……寝ながら顰めっ面で片手だけ動かす成人男性むっちゃこわ……。
怯えながら眺めていれば、片手がようやくある箇所で止まる。掛け布団を掴んでいた。そのまま掛け布団を引き寄せて、くるまって、ほう、と人心地ついたように表情を緩める。しかしすぐにまたむっと顔を顰めて、今度は私の愛用抱き枕シャーク、愛称シャっくんを布団の中に引きずり込み、全身を使って潰す勢いで抱き締め始めた。今度こそ満足げに顔を緩ませた男から、すうすうと静かな寝息が聞こえ始める。

「……」

虚無顔をするしかない。
遠くに視線を投げ、ため息を――……と、次の瞬間、私の視界に一枚のファイルが飛び込んでくる。本棚から半分はみ出ているそれ。灰色地のファイルに三人の男が描かれている、それ。
徐にそれへと近づき、手に取る。ファイルを見下ろして、ベッドで眠る男を見やる。またファイルを見て、また男を見て、もっかいファイルを見て、もっかい男を見る。

「観音坂独歩っじゃっね〜か!!」
「ヒュオァッ!? すっすみません観音坂です!」

私渾身のシャウトに、男改め観音坂独歩ががばりと跳ね起きた。全力で寝ぼけている目がぱちくりきょときょとまばたきをして、わからないながらに怒られたと思ったのか、スミマセンスミマセンと謝り続けている。

道理で見たことあるはずだわ。ヒプは先週落ちたばっかのレベルだし、落ちたのもブクロだから気付くのが遅くなった。ていうかこの絵と実物が絶妙に違え〜……確かに実物もイケメンだけど頭身が……違う気がする……。
ファイルと男とを交互に眺める私を、ようやっと焦点の合った目で観音坂独歩が捉える。「……? 夢か……?」と顎に手を当て首を傾げる様は、ついさっきの私とまったく同じであった。絵文字かな?

とりあえず一旦落ち着こう、とリビング兼寝室を抜け出してトイレへ向かう。観音坂独歩は放置だ。夢判断したんならやるとして二度寝くらいでしょ。
しかしトイレの扉を開いた私を迎えたのは、「ひぃっ……!?」と真っ青な顔を抱えて蹲る金髪であり、そっと扉を閉めて台所に向かった私を迎えたのは「出て行くタイミングを見失ってしまってね……」と苦笑するロン毛の三十路だった。

背後についてくるロン毛をそのままに、元の部屋に戻って財布から再びおみくじを取り出す。
神よ、衝撃の出会い、多過ぎやしませんか。
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