おざなりの懺悔


※割とがっつり下ネタ


ぽんっと間抜けた効果音と一緒に逆トリしてきた観音坂独歩にパソコンを与えたら、独歩夢を読みあさる立派な夢男子に成長してしまった。
これが私の罪である。ごめんなさい神様。オタクというものを概念からすら理解していない、ジャンプだって高校時代で卒業した男を、アラサーにして夢男子へと育ててしまったのはこの私です。懺悔します。
……でもこんなの、想像なんて出来なくないですか。

「ハァ……。いいな、この俺は……。彼女に連れられて、プールだってよ……はは……プールか……最後に入ったの、中学の体育じゃないのか……」

今日も今日とて、独歩はリビングでパソコンにかじりついている。
新しいやつ買うんだけど古い方いったらあげるよ、と妹からもらった、黒のノートパソコン。これで開かれているのがワードなりパワポなりその類であれば、家でまで仕事をしているかわいそうな社畜の図でしかなかったのに。
現実、その画面に映し出されているのは、観音坂独歩の夢小説なのだ。本当にどうしてこうなってしまったのか。

私も夢女だが、妹も夢女だ。そして同類であるがゆえにデータの処分を簡易にしか行わなかった妹のブクマ欄には、夢小説サイトやランキングサイトが羅列していた。
日中仕事やら私用やらで家を空けることが多い私に対し、逆トリしてきた独歩には無限にすら感じられる空白の時間がある。暇潰しにでもなればとパソコンを与えたが運の尽き。
己が主人公と言っていい小説たちをついに発見してしまった独歩は、おそらく最初こそ自分が創作物にされているという事実に恐れおののいたものの、気が付いたらどっぷりとこちら側の世界に浸かっていた。

気が付いた時には、もう、手遅れだった……。
四六時中ノートパソコンを抱え、イラストコミュニケーションサービスに投稿された夢小説を読み、各夢小説サイトを漁りまくり、いつの間にやらフリーメールアドレスを用いて登録していたSNSの巡回をする。
そう、もう、手遅れだった。トイレが妙にイカ臭くなってきた時、私は己の罪を自覚した。

逆トリ生活が一ヶ月も続けば、もはや夢男子化を隠すことすらしなくなった、観音坂独歩。
彼は今日も今日とて幸せそうに、けれどクソ鬱になりながら己の夢小説を何度も読み返している。それこそ穴が空く程に、パソコンを見つめている。

「やっぱりこの新婚話はいいな……。俺も、優しくて穏やかな妻に、おかえりなさい独歩くん、って迎えられたい……いいなこの俺……代わってほしい……代われ……クソが羨ましい……」
「自分で自分に呪詛吐くのはどうかと……」
「呪詛吐きたくもなるだろ。この、この俺は何もしてない……ただたまたま、女神に会えただけだ……俺も女神ほしい。……ウッでもこの関係性は尊い、やはり俺に邪魔は出来ない……ッ」
「あ、はい……この短期間でオタク化が深刻すぎますね」

デスクトップパソコンを置いている机に頬杖をつきながら、こたつに潜り込み顔を覆う独歩を眺める。
逆トリ生活が終わったあと、果たしてこの独歩は独歩夢の存在しないヒプマイ世界で生きていけるのだろうか。そんな不安すらよぎる。いっそネットだけ繋がった状態で帰らせてあげたい。そして独歩夢の感想を聞く係になってあげたい。それくらいしか私に出来る罪滅ぼしはない気がする。

「ハァ……はー……ぁー……俺もむっちり淫乱の女の子を抱きたい……何でこの俺は……何もしてないのに……恵まれすぎかよそんなテメエがネガってんじゃねえよ……俺はお前の、何倍も……何倍も……ウッ羨ましい、つらい、俺も聖母系年下女子によしよしセッをされたい……」
「女の目の前でよく自分のエロ小説読めますね……いきなり喘ぐからびっくりした」
「なんかもう、なまえちゃんは同志というか、先輩というか……こうなったらもう、今更、恥なんか持つ必要もない気がするというか」
「最低限の恥は持っていただきたいんですが。またトイレがイカ臭くなる……」
「確かに公開オナネタもいいよな……見るのも見られるのも最高だ……あれだ、この、――これだ。この話。これは特に良かった。俺がちょっと喘ぎすぎてて自分で自分に引いたけど、気持ちはめちゃくちゃわかる」
「何が確かになのかわからないですし言ってることもわからないです」

やっぱりこれは私の罪なのだ。ああ神様、仏様、伊弉冉様、神宮寺様、ごめんなさい。
私にはもう彼を止められない。こたつの中に片手を突っ込みながら画面をスクロールし続ける観音坂独歩を、もう止めることは出来ない。

「……ッハァ、は……なまえちゃん、見る……?」

興奮に火照った顔で見上げられ、頭を抱える。
きっと善良に生きてきただろうアラサー男性を、立派な夢男子に、そして思考のぶっ飛びつつある変態に育ててしまったのは、この私です。ごめんなさい神様。

「、見ます……」

でもこれはこれで嫌いじゃないから、ほんと夢女って業が深い……。
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