裏切りの夢 綱吉が殺された、夢を見た。 それは鮮明な夢で、額に銃弾を受けた綱吉は派手に脳味噌を、血液をぶちまけ、それを浴びて呆然とする私を嘲笑うかのように、敵は私に拳銃を投げ渡した。 殺したのはお前だとでも言うように。 (違う、私じゃない) なのに気が付いたら綱吉は私の数歩前に倒れている、私は拳銃を握り締めている。 綱吉の後ろで彼の脳味噌を浴びて呆然としているのは、誰? (違う……っ違う、違う!) 拳銃を投げ捨てて崩れるように座り込む私を見て、倒れた綱吉の背後に立つ女が嗤う。 その笑みは、その顔は、まさしく私のもので、おかしい、じゃあ私は、誰なの。 混乱する私に追い討ちをかけるように、死んだはずの、殺したはずの綱吉が、くつくつと嗤った。 (俺を殺して、どうするの?) 私じゃない、私が殺したんじゃないと、叫びながら部屋を飛び出れば襲う銃弾、これじゃあまるで私がボンゴレを裏切ったかのようじゃない。 山本くんも獄寺さんもリボーンも了平くんも骸さんもランボくんも、私を育ててくれた雲雀さんでさえ、私を殺そうとしてくる。裏切り者を排除しようとしている。 (それがなまえの選択だったんでしょ?) 綱吉の声が脳内に響いた。 ――… 「…違う」 確かに私はボンゴレを裏切った。ボンゴレを捨てた。 でも綱吉は生きている、死んでない、死なせない。彼は仮死状態になるだけ。 私は、殺さない。 「なにが違うの?なまえちゃん。ひどく魘されてたみたいだけど」 「……大丈夫です。少し、嫌な夢を見ただけですから」 「そ?じゃあ、行こうか?ボンゴレとの会談に」 楽しそうな笑みを浮かべる白髪の彼を見上げて、薄く笑った。 「あなたは性格が悪いですね、白蘭様」 私は、綱吉を、ボンゴレを殺さない。 何を引き換えにしても守ってみせると、誓ったんだから。 |