若干卑猥注意


薄紅色の唇に触れる。甘くて柔らかいそこを堪能するように、何度も。
なまえの両手は左手で押さえつけ、右手は制服のボタンをはずしていく。
ぽろぽろと涙をこぼしながら俺の行動ひとつひとつに反応するなまえに、ひどく興奮した。濡れた目が、俺を射抜く。

「花宮、先輩…」

小さく漏らされた声に違和感を覚えたのは、それから何分後だったろうか。


――…


何度も口付けを落とし、首や胸元に花を咲かせて。スカートの中に手を入れた頃、何でだと気が付いた。
それはほんの少しの違和感。

初めてだから、何をされるのかわかっていない?
それとも、本当に何かをされるとは思っていない?
だとしても、おかしかった。

「なまえ、抵抗しねえのか?」

それとも、と、浮かんだもうひとつの考えは頭の隅に追いやる。
あり得ないと思ったからだ、それだけは。

快楽に濡れる目元で、なまえは笑う。

見たことのない、表情で。


「抵抗される方が、先輩って燃えるタチなんです?」

くすりと、挑発的な笑みをこぼして、なまえは告げた。
レースのあしらわれたショーツに触れていた手を引き、なまえの顔をじっと見つめる。

目の前にいる、こいつは、誰だ?

「んんー…でも抵抗されると萎えるってショーゴ言ってたし、先輩もそっち側なのかなあと思ったんですけど、私の読み違いですね。ごめんなさい」
「なん、おまえ、」
「あはっ、花宮先輩どうしたんですか?」

ゆるんだ手から自分の両手を抜き取り、何も隠す物の無い胸元を手で隠そうともせず、目の前の女はただ口元に手をあてて笑った。

「まさか、あの花宮先輩が、周りと一緒みたく私のこと天使だの聖母だの思ってたわけじゃないでしょう?それともそう思ってたんです?それなら、」

一拍をあけて、女はするりと俺の顎に指を滑らせる。
そのまま触れてきた唇に、めまいがした。

「天使みたいに優しい後輩ちゃんが、無理矢理ヤられそうになっても抵抗せずに受け入れちゃうビッチで、残念でしたー」

くすくすと笑いながら、なまえは俺の首に両手を回す。
軽く耳を噛み、そっと囁く。…天使なんかじゃない、人間でもない。悪魔の囁きだ。

ぞくりと、さっきとは別の何かが、背筋を走った。

ああ、なんだ。同類なんじゃねえか。
笑みが漏れる。笑いが止まらない。俺は馬鹿か?なんで気付かなかったんだ。
恋は盲目だとでも言うのか。っは、本当に笑うしかない。


突然笑いだした俺に何を言うでもなく、誘うような目でなまえは俺を見つめた。
その唇に吸い付くように、口付けを落とす。

さあ、続きをしよう。


「イイ子ちゃんな私を壊せて、満足しました?」
「んなわけねぇだろ、バァカ」
「じゃあもっと楽しませてくださいね、」
――花宮、先輩?



…これが恋だと気付かなかった、俺が馬鹿で。
こいつが悪魔みてえな女だと見抜けなかった、俺の負けだ。

それでも良いと思ってしまうのだから、本当に、救えない。
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