「300番、ミズキ! 三次試験通過第二号、所要時間六時間十八分!」

上の辺りから響いてくるアナウンスと、目の前で「ボクも今さっき着いたところなんだ」と笑うヒソカの声を聞きながら、私は溜まりに溜まった鬱憤を晴らすように大きく叫んだ。

「一分差じゃねーッか!!」

扉の向こうからヒソカがゴールした時のアナウンス聞こえてきたわ!

「二人きりだね、ミズキ」
「ソウダネ」
「ナニしよっか?」
「なんもしねえよ」

もうほとんど治りつつある右足を庇いながら適当な場所に座り、おいでと手招くヒソカにはしっしっと手を払う。
周囲を見渡すと、ご丁寧にもトイレとシャワールームが設置されていた。これはありがたい。

「私シャワー浴びてくるから」
「その火傷は大丈夫なのかい?」

件の炎で治しはしたけど、念による攻撃だったからか、まだ私の念が未熟だからか、完全には治らなかった火傷の痕。
まあ元より自然治癒力はやたら強化されていたから、その内治るだろうともう炎を纏わせることもしていない。
それに、なんとなく癖のようなもので庇ってはしまうけれど、もう痛みはないのだ。妙な熱さは時折感じるけれど。

「別に平気。あんたの肩の方が痛いんじゃない?」

私の返答に目をぱちくりさせたヒソカは、にぃんまり、いい笑顔を浮かべた。

「心配してくれるなら、一緒にシャワーを浴び」
「うっせ肩取れろ」

心配したわけではないけど、心配するだけ無駄だった。なんかすっげえ損した気分。
ミズキは相変わらず酷いなァと笑うヒソカの声をBGMに、私はシャワーを浴びにさっさとその場を去ったわけだ。

で、帰ってきたらイルミが増えていた。

「ミズキ」

わあ、怒ってらっしゃる。
そういえば飛行船の中でイルミのこと沈めたんだったっけ。めんどかったから。
どうせ二人きりになる機会もそうなかろうと思って忘れてたけど、まさか三次試験通過がこんなに早いとは思わなかった。

「や、やあイルミ、久しぶり」
「久しぶり、じゃない」
「すんません」

何で私こんな怖い顔で見られなきゃいけないんだろう。いやイルミを伸した私が悪いんだけど。
でも真顔のギタラクルドアップはこええよ。

「ミズキ、試験が終わったら俺の家に来て」
「え、やだ」
「来ないとキルにひどいことして無理矢理帰らせる」
「それはないわ」
「じゃあ来て」

理不尽極まりねえイルミの迫力に、思わずちらとヒソカへ助けを求めてみてしまう。
しかしヒソカは「ミズキが行くならボクも行こうかなあ」なんて、呑気にトランプタワーを作りながら独り言を喋っていた。どっちかっつーと乗り気じゃねーかふざけんな。
一応の予定では試験終わったら旅団のとこに一旦帰るつもりなんだよ。じゃないとシャルが多分怖くなるんだよ。

「キルが傷ついてもいいの?」
「弟を脅し文句に使うのマジでどうかと思……わかったよ行くよ行けばいいんだろちくしょう!」

真顔のイルミドアップに負けて私が頷いた瞬間、イルミは嬉しさマックス! とばかりにオーラが揺れていた。顔はド真顔なのに。
その時、私はとても先輩に会いたくなりました。作文。




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