21 黒子は朝練があるから、教室に入ってくるのは8時過ぎ、くらいだ。 始業時間は8時半。 そして現在、8時24分。 「教室戻りたくない…」 私はふたを閉めたトイレの便座に座り、壁にもたれて遠い目をしていた。 黒子の性格からして、今日学校を休むとかいう事はしないだろう。 そして青峰と黄瀬もいつも通りクラスにいるだろう。 んでもって私の机の上には今朝購買で買ったイチゴオレが乗っている。私が登校してる事は、既に教室にいるだろう黒子にはモロバレ。 顔を合わせづらい、と言うよりは、今日は赤司というストッパーがいないこともあって黒子がどういう行動に出るかわからないのが怖い、って感じだ。 黒子君まじ小悪魔。やばい。 携帯には青峰から「そろそろHR始まるぞー」とメールが入っている。 黒子からは音沙汰無いのがまた怖い。 教室入ったらきっと悩殺黒子エンジェルスマイルで「おはようございます、相坂さん」って言ってくるんだよ絶対。こっえぇ。 想像しただけで可愛すぎて涙出てくる。 とか考えてる間に時刻は29分。遅刻は避けたい。 「しゃーない戻るか…」 もう遠い目しか出来ないが、仕方ない。 気合いだ気合いだ気合いだ気合いだー!と某ハッピーのように気合いを入れ、無理矢理テンションを上げ、トイレから出た。 「おはようございます、相坂さん」 「ひぃ」 そこには手洗い場で手を洗っている黒子さんがいました。 か、鏡越しに挨拶されんのこえー!そして悩殺黒子エンジェルスマイルいただきましたー! 私の予想を大きく上回るわこの子…もうやだ…。 「お、おおおはよう黒子君…」 「はい」 はい、じゃねーよなんなんこの子…。すげえ満足そうまじ怖い。 え、偶然トイレのタイミング合っただけだよね?ずっとここにいたとかじゃないよね?そうだとしたら私泣いちゃう。 と、廊下のスピーカーからチャイムの音が響きだした。 このままだと朝のHRに遅刻してしまう。 別にトイレで用を足したわけではないけどとりあえず手を洗って、黒子君も急がないと遅刻だよなんて言いながら彼の横をすり抜けた。 「相坂さん、待ってください」 訂正、すり抜けようとした。 「え、ど、黒子君あの…遅刻…」 「ちょっと、2人でサボっちゃいませんか?」 クエスチョンマーク仕事して頼むから。 サボらない?っていうかサボるぞ、だったよ今の。 黒子に捕まれた腕に、ぞわわと鳥肌が立つ。人って恐怖感じた時でも鳥肌立つのかー身をもって知りたくはなかったなー。 「こっちです」 問答無用で私の手を引く黒子に、もういいよなるようになれちくしょうと泣きそうになりながらもついて行く。ついて行くっていうか手ぇ引っ張られてんだから行かざるを得ないんだけどな! 黒子も細いとは言えやっぱり男なわけで、ちょっと何回かふりほどこうとしてみたけど無理だった。性別の差ェ。 そして何度かふりほどこうとした所為で拘束は強くなってしまった。 どんまい私!涙拭けよ! 家を出る前に赤司が「くれぐれもテツヤと2人きりにはなるなよ。…僕が言うことではないが、多分、今のテツヤは何をするかわからない」って言ってたのをぼんやり思い出す。 あと「それと、もし緊急事態になったとしてもテツヤを傷つけたらつばきでも犯す」って言われたのには泣いた。キセキ厨赤司まじこわい。勘弁して欲しい。 ボクサカオヤコロのがまだマシだった。 「相坂さん、」 ガチャリ、鍵の閉まる音がする。 黒子に連れてかれた先は、校舎の隅にある、ほこりっぽい資料室、で。 何で黒子くんそんなとこの鍵持ってんですかね。謎い。先生よ鍵の管理はちゃんとしてください。 カーテンの閉められた暗い室内。鍵は黒子の手の中。そしてこの資料室は人が来ない事で有名かつ、近くに生徒や先生が使うような教室もない。鍵は閉められ、扉は黒子の背後。 あ、うん。詰んだな。 ごめん赤司、すごいバッドエンドオーラ漂う場所で黒子と2人きりになっちゃいました。 黒子を傷つけないように頑張ります。 ← → back |