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うっすら、目を開く。
どうやらレポートを書いている途中でうっかり寝落ちてしまったらしい。
あーもー提出期限明日なのに。今何時。
そんなことを考えながらうつぶせていた顔をあげ、私は、制止した。

「おはようございます、よく眠ってましたね」

寝不足だったんですか?と、隣から柔らかい声が聞こえる。
聞こえるのだけれど、私はそれに反応をすることが出来なかった。

レポートを書いている途中に寝落ちした、のは確かだ。
ならば顔を上げた私の目の前には、愛用のノートパソコンがあるはず。
なのに。

目前に広がるのは、暖かそうな日差しの入り込む、広い図書室。白いカーディガンを着た何人かの生徒。
ここは一体、どこなのだろう。

「相坂さん?」

再び、今度は不思議そうな声が聞こえてきた。
ゆるりと視線を向ける。
私を見つめる、無機質な、でもどこか心配そうに揺れる、瞳。

…くろ、こ?

「お、はようございます…」
「おはようございます。どうしたんですか?ぼーっとして」

唖然気味に返答をした私に、彼はふわりと微笑んだ。おおう、可愛い。
可愛いけど、そうじゃない。

何で黒子がここに、というか何で私がこんなところに。

制服から見て、ここは恐らく帝光中だろう。そして図書室。現状から考えると、私と黒子は図書当番なんだろうか。

「あ、夢か」

なるほど私はまだ夢を見ていたらしい。
明晰夢、というんだったっけか。夢を見ている自覚のある夢。
痛みはあるのだろうかと自分の手の甲をつねってみたら、痛かった。へえ、痛みのある夢もあるんだ。

「…大丈夫ですか?」

一転、今度は黒子から怪訝そうな視線を向けられる。そんな顔も可愛いんだから黒子ってば本当に罪な男だ。まじ天使。

「うん大丈夫。私たち今図書当番中なんだよね?ごめんね、寝てたみたいで」

夢だとわかってしまえばなんてことない。
へらりと黒子に笑みを向ければ、黒子はなんとも納得いかなさそうな表情をしたけれど、すぐに「気にしないでください」と微笑んでくれた。
くそかわいい。天使はここにいたのだ。

にしても、本当にリアルな夢。
こんな広くて綺麗な図書室見たことも無いし、帝光中の外観なんて原作内でもはっきりと見たことは無い。
夢だとしたら、私の場合はよくある程度の視界の向こう側は暗転していたりするのだけれど、この世界はとてもクリアだ。
なにもかもが鮮明に、現実のように映っている。

ところで今は何時なのだろう。
図書室に備え付けられていた時計を見やれば、どうやら昼休みの最中のようだった。
この学校のタイムスケジュールを知らないからなんとも言えないが、恐らく後5分程で昼休みも終わりだろう。
ちらほらと、図書室を出て行く生徒たちが見える。

あ、でも、昼休み終わったら私はどの教室に帰ればいいんだろう。
いやでも黒子と2人で図書当番をしているということはきっと同じクラスなのだろうし、黒子についていけば問題無いか。
あえて問題点をあげるとすれば、私が黒子を見失いはしないか。
まあ原作やアニメで見慣れてはいるし、この目立つ水色の髪の毛を見失うことなんて無いと思うけれど。


そんなことを考えていれば、予鈴らしいチャイムが鳴り、何人かの生徒が慌てたようにカウンターへと本を持ってきた。
黒子と2人でそれを受け取り、見よう見まねで貸出の手続きをする。
全ての作業を終えた後は、電気を消して図書室を出て、鍵を閉めて教室へと向かった。

改めて、本当にリアルな夢だ。
図書室から出た廊下の作りも、私が今まで見たことのある学校とは違う。
本物の帝光中もこんな感じなのかなあ、ときょろきょろしていたら、黒子に本日二度目の心配そうな目線を向けられた。


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