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帝光中は屋上を開放しているらしい。

今どきどこの学校も屋上は立ち入り禁止だと思う。
高校上がったらあの漫画のキャラみたいに友達と屋上で弁当食べたりするんだふっふーう!なんて思っていた頃もあった。あの頃の私は若かった。
でも帝光中は屋上に入ることが出来る。
授業中は鍵こそかかっているものの、昼休みと放課後は開放されていた。

そんな屋上で青峰と2人きり、なう。

「ねえ大輝くん」
「くんとかきめえ。なんだよ」

屋上の中でも最も高い位置にある貯水タンクの前で、私と青峰は互いに頭を向けるようにして横になっている。
2人とも手は頭の下に置き、私は両足を投げ出して、青峰は膝を立て足を組んで。

他のキセキがいないのは単純に今が部活中の時間だからだ。
才能の開花した青峰はやっぱりサボり魔らしい。

「2人を同時に幸せにしたいんだけどどうやったら出来ると思う?」

言っちゃ悪いが所詮アホ峰だしロクな答えは返ってこないと思う。
でも他に聞ける子いないんだよお私の交友関係狭すぎ泣いた…。

青峰は「は?」と小さくなんのこっちゃといった感じの声を漏らしてから、数秒後、口を開いた。

「なにお前、乙女ゲーでもしてんの?」
「君から乙女ゲーという言葉が出てきたことに驚きを隠せない」
「んだよ、別に知っててもいーだろうが」

青峰ほんとまじ何でそんな言葉知ってんの。
君はあれだろ、バスケバカでアウトドアな少年のはずだろ、なぜ知っている。
あれか、もしかして桃ちゃんがやってたりするのか。…いやそれはないな、あの子もアウトドア派っぽそうだ。
少々混乱しつつ、まあそんなとこだと適当に答える。
赤司と黒子のことだよ!なんて言えないしな!

「いや…無理だろ」
「ですよねー」
「あれじゃね?2人の好感度マックスの状態でエンディング迎えなきゃいんじゃね?」
「それだといつまで経っても終わらないじゃないか…」

ゲーム自体を放棄してるよ、そんなんだめだろう。

そして現状でそれをやろうと考えると、私は2人の男を手玉にとる悪女になってしまいそうだ。なにそれこわい。
私にそんなこと出来る器量は無いよ…。

「つーかそれってよくよく考えてみたら赤司とテツの事か」
「ブッフォオ」
「きったね、吹くなよ」

びっくりしすぎてむせた。
ゲッホゴホ言いながら半身を起こし、背後の青峰を振り返る。
奴は寝ころんだままこっちに視線を向け、にやにやと笑っていた。殴りたい。

そして爆弾発言は更に続く。

「俺的にはロールキャベツ男子なテツのおせおせ感もいいと思うぜ、それにあたふたするつばきもうめえ。対して赤司は学校だとつばきをあんだけいじめてるにも関わらず家では甘えんぼとかだったりしたら俺はきっと天元突破できる」
「…は、え、ちょ…っは!?」
「お前も元は控え目系冷めてるヒロインだったけど最近はスルースキル高い系受難ヒロインになってきたからな、俺的には今の展開の方がメシウマ。赤司とテツとつばきの関係でご飯10杯はイケるぜ」
「ちょっと大輝さん現実に戻ってきていただけますかね!?」

そんで言ってる事がだいたい合ってんのがこええ!
なんだこいつ実はエスパー?エスパーだったの?
がくぶるしながらおそるおそる、「え…なに、もしかして大輝ってオタク?なの?」と問いかける。
バーッカちげえよって言われた。そうだよね青峰はオタクじゃないよねまったくもうびびらせないでよお!

「俺はただヤンデレ系の乙女ゲーやらなんやらをプレイすんのが好きなだけだ」
「うわあ聞きたくなかった」

他にもギャルゲとBLゲーにも手を出しているらしい。なにこれこわい。恐ろしい。青峰まじやばい。
出所は桃ちゃんらしいよ!うわあなんだこの感じ泣いていいかな。

「俺は無自覚な友人、テツはストーカー、赤司は依存気味、黄瀬は押しかけ女房、緑間は神格型、紫原があがり症みたいな感じだとまじでうめえんだけどなー」
「えぇえ…やめろください」
「いっそさつきがヤン百合なのもありだな!」

「やめろください!!」

喜々として話す青峰に、私は泣いていいと思った。


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