「おはようございます、主様!」

元気いっぱいに声をかけてくれたのは、お茶碗の載った大きなお盆を抱える物吉くんだ。おはようと微笑み、隣を歩く。
なんだか今日は幸せそうですね!と満面の笑みを向けられて、ついつい苦笑をしてしまった。どれだけ表情に出るタイプなのか、私は。それともどれだけ、あの夢を幸せに思っているのか。

「主様が幸せそうですと、僕も嬉しいです」
「うん、まあ、物吉くんが嬉しく思ってくれるのなら、ずっとこのままでいよう」
「はい!」

二人並んで広間に入れば、既に席についていた刀剣男士たちが口々に朝の挨拶を述べてくれる。それになるべく逐一返しながら、私も私の定位置に座った。
隣は近侍の日本号と、配膳を終えた物吉くん。向かいには初期刀の国広。
ちらと視線を寄越してきた国広にまで「随分と機嫌が良いな」と言われてしまったので、そんなに表情筋がゆるゆるになってるのだろうかと頬を押さえてみた。温度は、少し下がったと思うのだけど。

全員が揃い、いただきますの挨拶をしてから朝食を摂る。
時間は朝の七時、いつも通りの一日が始まる。

現在顕現が許可されている刀剣の全てが揃っているこの本丸は、なかなかの大所帯だ。大広間に繋げた机を二列並べて、ようやく全員が座れる。
最初は閑散としていたこの大広間が、こんなぎっしりになる日が来るとは思わなかった。これ以上増えたら隣の広間とも繋げないといけないかもしれない。
そんな状態だから、朝食前後に会話できる刀剣男士は限られてくる。席順もだいたい決まっているし。長曽祢さんは私とは違う列の、入口寄りの辺りだ。
だから、挨拶しか出来ていない。いつも通りだけど。

「それで?何で今日はそんなに機嫌が良いんだ。書類が溜まっているから憂鬱だと、昨日は溢していたのに」
「ちょっとね、良い夢を見たの」

隣でにやにやしている日本号の太股を軽く抓りながら、国広の問いに笑って返す。
「夢、ですか?」と首を傾げたのは物吉くんで、曖昧に、頷くだけにとどめた。「とっても良い夢だったの」とだけ、付け足しておく。

「今夜も良い夢が見られると良いですね」
「熟睡出来なかった、ってことじゃないのか?」
「物吉くんと国広は、反応の違いが顕著だね」

くすくすと笑ってから、礼を言う。
本当に幸せな夢だったから良かったものの、確かに身体の疲れが取れていないような、あまり眠れなかったような気分になったのは確かだ。
最近書類を溜めていたし、熟睡出来なかったのはその所為もあるだろうか。今日はなるべく早く、書類仕事を終えよう。

ふと、視線を感じて顔をあげる。そうっと首を動かせば、長曽祢さんと目が合った。

「……」

微かな笑みを向けられ、私も曖昧に笑って返す。
食事時に歓談をするなんて、はしたないと思われただろうか。……にしても。

「長曽祢も、随分と機嫌が良いみたいだな」

私と長曽祢さんの、特に何の意味も無いアイコンタクトを目の当たりにしたらしい日本号が呟く。
最後に残った汁椀の中身を飲み干してから、小さく言葉を返した。

「そう……みたいね」

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