果たして友達とは 



結局その場は、休憩が終わり緑間に呼ばれたおかげで名残惜しそうに黄瀬が去って行ったことでおさまった。
こっちを見ていた気がした黒子も気付いたら練習の輪に入っていて、あたしは女の子たちの視線が気になる中、体育館の隅に座り込む。

一番、あたしと黄瀬の近くにいた子達は、最初こそ「なにあの女…」みたいな雰囲気を醸し出していたものの、次第にあたし…というか黄瀬の異様さに気付いたのか訝しげに、一体何が起こったのかとざわついていた。
その内の数人に「大丈夫だった?さっき、何があったの?」と好奇心半分心配半分、といった感じで問いかけられてしまうほどだったのだから、傍目に見てもあの時の黄瀬はおかしかったんだろう。
あたしは、わからない、としか答えられなかった。


黄瀬と話すようになったのはいつ頃だったろうか。
多分、黄瀬がバスケ部に入ってからだと思う。それよりは、もうちょっと後だったか。
2年の秋か冬くらい、だと思う。

その時はクラスも同じではなかったし、赤司に呼ばれてお昼を一緒にした時や登校する時にたまたま会った日、赤司と黒子に連れられバスケ部と一緒に下校したときくらいしか話したことはなかった。
多分、あの頃話した回数なら両手の指で足りるくらいだと思う。

もともとイケメンにそんな騒ぐ性質でもなかったし、どちらかというと黄瀬みたいな顔つきの人はどうにも顔がうるさいというか、見ていて目の保養になると同時に疲労のようなものを感じるから苦手だ。
それに、ジャンルが違うとはいえ、赤司とそれなりに長く一緒にいたせいで整った顔立ちの人には慣れている。

2年の時は、あたしも黄瀬も、ただの顔見知り、友達の友達、程度の仲だった。

それが変わったのは、3年になってからだ。
たまたまクラスが同じになった。新学期一番最初の席替えで席が前後になった。
ほんの1ヶ月前だ。たかが1ヶ月で、こんなにも懐かれるものなのか。
あんな、あんな表情をされるような関係になった覚えは、無い。


もしかして黄瀬ってあたしのこと好きなのかな、なんて自意識過剰なことを、ちょっとだけ考えもした。
でも、それはない、と思う。人の心を読めるわけじゃないから断言は出来ないけれど。

だって黄瀬の周りにはあんなにも女の子たちがいるんだ。自分を卑下するわけじゃないけど、せいぜい並か並よりちょい上程度の自分に黄瀬が好意を抱くとは到底思えない。

「やっぱりなんか悪いことしたかなあ」

好意からくる言動でないのだとしたら、怒りか、それに類似した感情からくる言動なのかもしれないと思う。
かといってやはり身に覚えは無い。
けど、人を傷つけたりする行為っていうのは得てして無意識に行われているものだ。
あたしも、無意識に黄瀬を傷つけたのかもしれない。

部活終わったら、謝ってみる…か?
いやでも、何をしたのかもわからないまま謝ったとして、それで黄瀬は気を良くするだろうか。しないだろうな。

「めんど…」

なんで、あたしはこんな黄瀬のことばかり考えているんだろう。

目の前でいつの間にか始まっていたらしいバスケの試合をぼんやり眺める。
黒子のパスを受け、鮮やかなダンクシュートを決める黄瀬。
着地と同時にこっちへ笑顔を向け、Vサインをしてくるその姿は、いつもの黄瀬となんら変わり無かった。

逆にそれが、不自然に思えて仕方なかった。



 (ちょっと頭冷やした方がいいかも)


back
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -