不鮮明な嫉妬 



気に食わない、と、自分の後ろでぼんやりと窓の向こうを眺めているかえでを見やって、心の中で吐き捨てた。

黒子っちが消えて1ヶ月。くらい。

もうすぐ10月で、中3の自分含むクラスメイトたちは受験シーズン到来にわたわたしている。
俺は多分、海常に行くんだろうと思う。
推薦は何校かから来ていた。海常は全国区だし、それなりに有名なPGの人もいるらしい。
出来ればかえでにも、海常に来てもらいたい。
毎日一緒に生活して、自分のバスケをずっと見ていてもらいたい。

でも、そんな大事な時期にも関わらず、かえでは最近ずっと、こんな調子だった。
原因はわかる。黒子っちだ。

黒子っちとかえでの仲が良いのは知っていた。
とはいっても俺と赤司っちの次に、くらいだろうけど。
だからそんな黒子っちが俺達にも、かえでにも姿を見せないでいるのが哀しいんだろう。
もちろん俺だって、部内では黒子っちと一番仲良くしてたつもりなのだし、悲しくないわけではない。


だけどどうしても、苛立って仕方がなかった。
かえでがずっとずっとずっと、黒子っちのことだけを考えて過ごしてんのが。
彼氏は俺なのに。黒子っちよりよっぽど、俺のがかえでのこと知ってるし大好きなのに。
でも、まだ、我慢。
俺がそういう怒りを露わにすれば、かえでに嫌われてしまう。それだけは嫌だ、絶対に。

「ねえかえで、次移動ッスよ。行こ?」
「…ん、あー…うん。ごめん、ぼーっとしてた」

知ってるッスよ、黒子っちのこと考えてたんでしょ?
俺のことなんてかけらも見ずに、黒子っちのことばっかり考えて黒子っちにどうやったら会えるかって考えてたんでしょ?

かえでのことならぜーんぶ、知ってるんスよ?俺。

そんな言葉を飲み込んで、秋が近づいてくるとぼんやりするッスもんねーなんて適当な言葉を口にする。
淡く微笑んでそれに同意を示すかえでの手を強く握って、じゃあ行こ、と教室を出た。


かえでは確かに最近、黒子っちのことばかり考えてる。
けど、今この場でかえでに触れられるのも、愛を囁けるのも、俺だけだ。
だから今はまだ、この嫉妬は我慢できる。
かえでが好きだから。嫌われたくないから。ずっと俺だけの隣で笑っていて欲しいから。

汚い嫉妬は溜め込んで溜め込んで、心の奥底に捨ててしまおう。



 (全ては君だけの為に)


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