幼心に想う 



「ぶっさいく」
「!、おれ、ぶさいくなんかじゃないっす!」
「顔がいいからって、周りの子ばかにしてたのしいの?きみおともだちいないでしょ?みんなをばかにするからきみもばかにされるんだよ」
「べ、つに、ばかにしてなんか…」
「してるでしょ?」
「…っだって!それはあっちが!」
「ほら、やっぱりぶさいく。顔だけよくってもなんの意味もないよ。きみって、さみしいね」
「っ…じゃあ、どうしたらいいって、言うんすか…どうやったら、おれにともだちできるんすか」
「それくらい自分でかんがえなよ。ばかにしてるぶっさいくだからダメなんでしょ?じゃあ、中身もきれいになって、みんなを認めればいいんじゃない」
「みとめるって、どうやって」
「知ーらない」



「そう言って、その子は去ってったんスけど、後から露木かえでって名前の子だって知って、ずっと探してたんス」
「うわああ…なんか過去の自分がすみません」

黄瀬に昔の話を聞いて思わず頭を抱えてしまった。
黄瀬なんか全然可愛い方だよ、あたしの方がよほど生意気で嫌なガキだ。びっくりした。全然覚えてない。

真っ青になって謝るあたしに、黄瀬は何で謝るんスか?と不思議そうに笑う。

「俺、かえでにそう言ってもらってから、子供なりに自分の言動省みて、だいぶ態度改めたんスよ。そしたら友達も出来て、周りの大人にも褒められたりして。だからずっとお礼言いたかったし、そんなかえでに俺の隣で笑ってて欲しかったんス」
「いや…そんな」

過去の自分がどういう意図で黄瀬にそんなことを言ったのか、まったく覚えがないからなんとも言えない。
単純にむかついただけなのかもしれないし、と思うと、ただただ黄瀬に申し訳ない。

「だから、改めてありがとうって言わせて、かえで」
「…、」

ふわりと優しい笑みを浮かべる、黄瀬。
そんな顔で撫でられると…照れるんですが。と、そう思いながらも「こちらこそ」と返す。

黄瀬があたしを想ってくれる理由を知れて嬉しいのは、本当だ。

周りに合わせて笑ってるだけじゃない、弱くて、ずるくて、性格悪いような黄瀬自身をあたしが知ってたから。
そんな黄瀬を窘めたのが、あたしだから。
だからこんなに、と思うと。

「ありがとうは、私の台詞だよ」

そんなにも長い間、私を探して、想ってくれてたんだ。

なら、私もその思いに応えなきゃいけない。
黄瀬の好意を受け止めて、私の好意もいっぱい、伝えて。

「涼太、これからも、よろしくね」
「どしたんスか急に…でも、俺こそ、よろしくッス」

きゅ、と互いの手を握り合って。
あたたかい風の吹く屋上で2人きり。

私たちはどちらからともなく、キスをした。



 (君となら、きっと)


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