束縛に関する考察 


束縛する意味ってなんだろう、と思う。

その人が好きで、その人も自分を好いてくれているのならその好意を信じるべきだ、なんて綺麗事は言わないけど。

どんなに好きな人からでも、執拗に「さっき一緒にいた奴は誰だ」とか「何で昨日電話出なかったの」とか「ほんとに俺のこと好き?」とか、そういうのを何度も問いかけられたら嫌気もさすと思うんだ。
漫画や小説でもよくある話。あまりにも嫉妬しすぎて、束縛しすぎて、捨てられる。
それをみんなわかってるはずなのに何故、束縛するのか。
相手も自分も疲れるだろうに。
あたしは疲れることが嫌いだ。

それに、めんどくさくはないのか。

他人に干渉する、他人の生活に干渉する。
自分1人が生きることだけでも精一杯なのに、自分以外の人間のことまで考えていたら埒が明かない。
つまり2人分の人生について考えながら生活しなければいけないってこと、だと考えるとあまりの面倒臭さに眉根が寄ってしまう。


そしてなにより、あたしは昔の彼氏に束縛をされたことがあるのだ。それも、ひどく。
ああ本当にあれはひどかった。ミュージカルさながらのポーズをとりながら大袈裟な態度でそう言えるほどには、本当に。

昔はあたしも若かった。
最初は、「やだあたし愛されてるー」なんて可愛らしく考えていたものだけど、それも度を過ぎてくれば煩わしいし疲れるし、鬱陶しくなる。
結局それが原因で彼とは別れることになった。
…まあ、別れるのも大概、大変だったのだけど。


そんなわけであたしには束縛をしたがる人間の思考がまったくわからないのだ。

束縛しなければ相手が離れていってしまうと思っているのか、だとしたら束縛した方がよっぽど離れていってしまう確率は上がると思う。
それ以外に繋ぎ止める術を知らないのだろうか、…まあその場合は仕方ないのかもしれない。知らないのだから。

つまり無知は罪だってことか。
わけがわからない。


「お前、本当に俺のこと好きだと思ってる?」


ちらりと、その言葉と、それを言った彼の表情が脳内にフラッシュバックした。
ああ好きだよ、大好きだったさ。あんたのために弁当作ってきたり一緒に下校したり、楽しく過ごしてたろ?
お前がその言葉を何度も何度も、繰り返し言ってくるまではね。


「露木さん、顔、引き攣ってるッスよ」
「…ん、あー…そりゃどうも」
「女の子はやっぱ笑ってないとだめッスよ!ほら、にこーって!」

不意に、現実に引き戻された。
前の席の黄瀬があたしの方を振り向き、自分の頬に両手をあててニィ、と笑っている。

その後ろから迫ってきている現国の教師が黄瀬の頭に狙いを定め、教科書を振りおろそうとしているのを目の端に捉え、あたしもくすりと笑みを漏らした。

「ほら、やっぱ笑った方がかわいー…ってぇ!?」
「黄瀬ェ、授業中に女子を口説くんじゃない!」
「すまっせん、てか、口説いてるわけじゃないッスよお…」

クラスメイトの女子たちが羨ましそうに、妬ましそうにあたしを見つめていたことには気がついていないのだろうか、この人は。
教師に叩かれた頭をさすり、ぶつぶつと文句を言いながら黒板の方へと向き直った黄瀬にはバレないよう肩をすくめ、机に転がっていたシャーペンを握りなおした。


 (太陽に反射する、黄色が眩しい)


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