こぼれる手の平 



嫌われる、嫌われる、このままじゃ、嫌われてしまう。

いやだ、いやだいやだいやだ。
やっとふりむいてもらえたのに。やっとおれをみてわらってくれるようになったのに。
おれだけを、みてくれるのに。

嫌われちゃう、このままじゃ。

鬱陶しいと、捨てられる。
煩わしいと、放られる。

それはいやだ。絶対に、嫌だ。


かえでだけなのに、本当の俺を見てくれるのはかえでしかいないのに。
俺を助けてくれるのは、彼女だけなのに。

このままじゃそんな彼女にさえ、見捨てられてしまう。


わかっている。
わかってんのに。

他の男に笑いかけるかえでを見ると嫉妬で胸が焼け爛れそうになる。
俺以外の奴と楽しそうにしているかえでを見ると羨望で頭がおかしくなりそうで。
やっぱりそれを俺が手に入れることは、出来ないんスか、って。

気付いたら問い詰めてしまう。

だめだって、いやだって、思ってんのに。


ねえ、かえでは本当に俺のことを好きッスか?
俺はかえでがいてくんないと、生きてけないくらいかえでが好きッス。
かえでも俺と同じくらい、俺を好き?俺が、必要?

俺にはそうは思えないんスよ。
だってかえでには俺以外にも大事な奴が、いっぱいいるんでしょ?

俺より、大事な奴だって。


「頭、割れそッスわ…」

結局、かえでとプリクラ撮れなかったなって、おやすみと書かれたかえでからのメールを眺めながら思い出す。
それは、俺のせいだったんだっけ。

次は絶対撮ろう。俺のものだって示すために。


あれ、でも、次からは外で遊ばないようにしようって言われたんだ。

じゃあ、かえでと2人でプリクラは、もう撮れないのか。



 (携帯を、閉じた)


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