言葉に隠した想い 


「と、いう、わけでして」

お前最近またまともにご飯食べてないだろうと、野菜だらけのスープ片手に我が家にあらわれた赤司に、とりあえず黄瀬とのことを伝えればしばらくの無言のあと「そうか、良かったな」と微笑まれた。

果たして本当に良かったのか。
嬉しいとは思うが、やっぱり不安は、拭えない。
どんなに黄瀬を好いているとしても、あたしは結局、疲れたくはないんだ。

器に盛られた赤司お手製の野菜スープに木製のスプーンを突っ込んでぐるぐると回す。
食べ物で遊ぶなと手をはたかれ、ほんとにこの人はあたしの親みたいだなと思いつつも大人しく謝った。
スプーンですくって、口に含んだスープは温かくて、おいしい。
あたしも料理は出来る方だと思うけれど、それでも赤司にはかなわないと思う。本当にこの人は、何だって余裕でこなすんだなあと思いながら二口目に手を伸ばした。

「お前は、それでいいのか?」
「、ん?」

にんじんを飲み込んで、その質問の意図はなにかと赤司を見やる。
どこか馬鹿にしているような目線で、赤司はひとつスペースをあけたあたしの隣に腰を下ろした。

「まだなにか迷っているように見えるぞ、俺には」
「…相変わらず良い目をお持ちで」

そんなにあたしがわかりやすかったのか、それとも赤司の洞察力がおかしいのか。
半分ほど食べ終えたスープをテーブルに戻して、わかんない、と呟いた。

そう、わからないんだ。
黄瀬の事は好きなんだろう。人並みにどきどきするし、触れ合っていると恥ずかしいやら嬉しいやらで顔も熱くなる。
そう思うのなら、嫉妬や束縛なんてかわいく思えるかもしれない。それにすら、愛しさを感じられるかもしれない。

でも。自分に言い聞かせるように思っていても、あたしは心の奥底でそうはならないだろうと、理解していた。
だってあいつの時だって、あたしはそう思っていたんだから。

「かえでは、男を見る目が無いな」
「かもしれないね」
「目の前にこんな良い男がいるというのに」
「それは笑っていいところ?」

くすくすと笑みをこぼせば、怖い顔をした赤司に無理矢理ピーマンの乗ったスプーンを口に突っ込まれた。うえ苦い。

「とにかく、黄瀬は俺の大事なチームメイトだ。あまり心配させてやるなよ」
「…あたしは?」

意地でピーマンを飲み込み終え、問う。

外では決して見せない、いたずらっ子のような年相応の笑みを浮かべて、赤司はもう一度あたしの口元にピーマンの乗ったスプーンを差し出した。

質問への返事は、無かった。



 (答えてあげても、良かったけれど)


back
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -