対極の窓 



「理由は、僕には答えられません。でも、貴女が黄瀬君を傷付けたとか、そういうわけじゃないんです。だから、かえでさんが黄瀬君に謝る必要は、無いですよ」
「…そっか」
「僕は、笑っていたり、赤司君に苛められているかえでさんが好きです。あまり悩みすぎないでください」
「うん…、いや赤司くんに苛められてる私が好きっておかしくない」

普通に頷きかけたけど黒子もおかしいよ。黄瀬並におかしいこと言ったよこの子。

「ああでも、赤司君に困らされているかえでさんより、僕のせいで困ってるかえでさんの方が好きですね」
「…もう君はそれでいいよ」

反論をしようとしたが、諦めた。
好きだと言われているのだから好意的なんだと解釈していいだろう。うん。例え困っている姿が、と前置きされていても、だ。

それじゃあ僕はこれで、と黒子が立ちあがる。
なにか言うべきだろうか。…何を?
黒子はあたしの悩みに対する回答らしきものを持っていた。でも、あたしは黒子が抱えている問題に対する解答を知らない。
そんなあたしに、言える事は無い。

「黒子くん、あたしも黒子の事、好きだよ」
「、…ありがとうございます、かえでさん」

ふわりと微笑み、あたしの頭を軽く撫でて黒子は背を向けた。
こんなの言ったところで何が変わるってわけでもないだろうけど、黒子にも味方はいるんだってことは伝えられたと思う。

黄瀬の事をどうするか。
それは結局決まってないけど、少しは進展できたと思う。
いや、まあどうするも何もどうしようもないんだけど。


がた、と腰を浮かせて窓の外を見る。
もうすぐ昼休みも終わりだ。そろそろ教室に戻らなきゃいけない。
外はあったかそうだなあ、と思ったところで、視界に映った影に勢いよく、顔を後ろに向けた。

「っあ、違、」

窓にうっすら映った、黄瀬の姿。
振り向けば、手に世界地図の本を握りしめて、バツが悪そうに「違、これは、違うんス、あの、」と何度もなにかを否定していた。
もうそう言っている時点で、さっきのあたしと黒子の話を聞いてましたと白状しているようなもんだと、気付かないのだろうか。
何故か今にも泣きそうになっているのは、あたしが怒ると思っているからなのか。

聞いちゃったならどうしようもないし、こっちおいで、となるべく優しい声で呟いた。
瞬間、ぱあっと顔が明るくなった黄瀬は、本当に犬みたいだった。



 (話して、教えて)


back
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -