日だまりの景色



出張的な仕事から帰ってきてみれば、なんか知らん間に千果と近藤さんがめでたくくっついていた。…どうしてこうなった。何が起きた。

「どういうことなの土方」
「ンなもん俺が聞きてえよ」

土方の部屋で、2人して紫煙をくゆらせながら屯所の庭を見やる。
そこにはきゃっきゃうふふと楽しそうに手合わせをしている、近藤さんと千果の姿。めっちゃ楽しそうだけどやってることが割とガチだからなんか怖い。木刀の残像見えるんだけど。

「先日の猩猩星との披露宴、あれが終わって数日でこうなってた」
「まじでか…あれ本来は近妙のフラグが立つ回なのにな…」
「こんたえ?」
「ああ、そこは気にしないで」

やっぱり近藤さん強いですね〜いやいや千果も強いぞ総悟レベルだ〜そんなあでも近藤さんには適いませんよ〜、なんて会話が外から聞こえてきた。ほんの少し、げんなりとしてしまうのは何故だろう。微笑ましいっちゃあ微笑ましいんだが…。

「……なんか、見てて疲れる」
「お前もそう思うか」
「うん。ストーカー気質同士がくっつくとこうなるのか…」

土方と2人、煙草の煙をため息と共に吐き出した。

いや、千果が幸せそうならいいんだよ?近藤さんもやっと覚悟決めたっていうか、お妙さんのこと吹っ切れたみたいだし。それならそれで、本当に良い事だと思う。
ただ、まあ、なんだ。…付き合いたてのカップルってうぜえよな?っていう、あれですよ。

「、ていうか土方、もう邪魔しないの?」

ふと思って、煙草を灰皿に押しつけながら問いかける。
火が消えたのを確認して、1つしかない灰皿を土方の方へ寄せた時に、土方は2度目のため息を吐きながら答えた。

「近藤さんがあのチビを認めちまったなら、俺がどうこう言える話でもねーだろ」
「ふうん…そか。…やっぱり土方は優しいね」
「あ?叩っ斬るぞ」
「何でだよ褒めたのに」

ゆっくり立ち上がり、土方が煙草を吸っていて、近藤さんと千果が庭ではしゃいでいる景色を眺める。

「お、史紀!帰ってたんですかィ」
「副長、史紀さん、お茶が入りましたよー」

お茶を持ってきてくれた山崎と、見廻りから帰ってきた沖田がその景色の中に入った。
ちらと土方に視線を向ければ、瞳孔の開いている目と視線が絡む。
ゆるく、口元に弧を描かせた。

「ただいま総悟。山崎もお茶、ありがと。近藤さーん、千果!お茶にしよー」
「うわっ何でみんなそろってんの!?」
「2人のイチャつきっぷり見てた」
「やだもう史紀そんな照れるじゃあ〜ん!」
「リア充うっぜえ!おめでとう末永く爆発しろ!」

ありがとう!て満面の笑みで言われた。いや礼を言う前に爆発してくれ頼むから、300円あげるから。つーか近藤さんも照れてんじゃねーよ。

「今日は良い天気ですね、史紀さん」
「ん?そうだね。……もう少しで、本当に」

最後の方は、小声で呟く。
山崎は聞こえなかったのか、何か言いました?と聞き返してきた。なんでもないよと微笑んで、1人分のスペースをあけた土方の隣に腰を下ろす。

近藤さんがいて、土方がいて、沖田がいて、山崎がいて。他の隊士たちもいて。
あたしと千果が、混ざってて。


あとは彼女がいてくれたら、そこが。

私の思い描く、幸せな景色になる。



(もうすぐで、)(あと少しで)

 
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