愛しい花



なんということだろう。今日はスーパーウルトラデリシャスワンダフルラッキーな日じゃないのか。

新八くんと山崎が2人で話してるところに出くわすなんて!
あたしの嫁が2人で話してるところに出くわすなんて!!
あそこに混ざればあたしまじ両手に花じゃね?花嫁両手にランランルーじゃね?もう混ざるしかねーよキャッホォォォオウ!!

心の中で半ばキャラをぶっ壊しながら、スーパーの前で世間話をしているらしい2人に近づいていく。
あたしが声をかけるよりも先に気付いたらしい山崎が、可愛い笑顔を浮かべて手を振ってくれた。

「まじ天使…っ」
「え、史紀さん何か言いました?」
「いや何でもないです。山崎と新八君は買い物帰り?かな」
「はい。こんにちは、史紀さん」

まじ天使。
大事なことだから2回言いましたよ!

買い物帰りってのは正解らしく、2人とも買い物袋を抱えている。
山崎の持っている袋の中の8割くらいがマヨネーズに見えたけどまあいいだろう。後で土方シメてやろうかって思ったのは冗談だ。一応。

「そういえばこの前朝ご飯作りに来てくれたみたいで…ありがとうございました」
「いやいや、結局自分のも食べてったし。今度は新八君と神楽ちゃんも一緒に食べようね」
「ぜひ!お願いします」

顔をきらきらさせないで新八くん。眩しいよ。お姉さんには君の笑顔が太陽よりも眩しく見えるよ!

あたしと新八君の世間話を横で聞いていた山崎が、ふと「あれ?」と声を漏らした。

「史紀さん、この前行った時旦那と2人っきりだったんですか?」
「ん?そうだよ」

瞬間、山崎の顔がわずかに翳る。
そんな顔する山崎もかわいいな、なんて思う反面なんだか申し訳なくて、くしゃりと山崎の頭を撫でた。

「山崎、そろそろ帰ろっか。その買い物、土方のお使いでしょ?」
「あっいっけね!そうでした、あんまり遅くなると叱られる…!」
「じゃあまた今度遊びに行くね、新八君」
「はい!気をつけて帰ってくださいね」

ありがととお礼を言い、新八くんの頭も軽く撫でてからばいばいする。
いやあ良い目の保養になった。
天使は多ければ多いほど幸せになれる。

そして隣でわたわたと慌てている山崎の荷物を片方取って、あたしは真選組屯所の方へと歩き出した。
背後からは、急いであたしを追いかけてくる山崎の気配。

「史紀さん!そんくらいの荷物俺が持ちますよ!」
「あたしが持ちたいからいーの」
「で、でも」

うー、と困ったような表情を浮かべる山崎。
まったくもって中も外も可愛いんだからやってらんないわ。天使にも程がある。
これ以上あたしを夢中にさせてどうしようっていうのか!まったく!!

「じゃあこれでも持っててくださーい」

めんどくさそーな声をわざと出して、あいた山崎の右手と自分の左手を繋ぐ。
びっくりしてこっちをまじまじと見つめてくる山崎の視線には気付かないふり。
繋がった手を見たりあたしを見たり、あたふたしてる。かわいいなあ。

我ながら演技臭いとは思いながらも、にぃっと口角を上げて、いたずらっぽい笑みで山崎と目を合わせた。

真っ赤になった彼は、やっぱり、可愛かった。



 (山崎の手はあったかいね)(史紀さんの手は冷たかった)



――
手が冷たい人は心は温かいのか。
手が温かい人は心も温かいのか。

 
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