風邪っ引きトリオ



派手な音を立てて、ふすまが開けられる。
そこにはにやにやとした表情の千果がいた。

「…何してんのお前」
「だって万事屋トリオが風邪引いたって聞いたらさー!神楽と新八が心配じゃん!?」
「俺は心配じゃねーってか」
「ぶっは!銀ちゃんすっごい鼻声ー」

今朝方、銀時から3人して風邪を引いたと伝えられ看病のために万事屋へ来ていたあたし。
どうやらグラさん回だったらしい事は後々気付いたのだが、その翌日だったため特に関係は無く。ポカリやら薬やらを持って、おかゆを作って、と3人の看病をしていたのだが。

どっから聞きつけてきたのか、万事屋に現れた千果はえらく楽しそうな表情で神楽ちゃんの枕元に腰を下ろした。

「大丈夫?」
「どうってことないネ。こんなのすぐ治ブェックシュ!」
「すっごいくしゃみ、マスクした方がいんじゃね?」
「…わかったヨ。千果に移す訳にはいかないし」
「あれあたしには移しても良かったように聞こえる」

さっきまでマスクしろってあんだけ言ったのに、私はそんなのでおさえられる女じゃないとかってまったく聞かなかったのに。神楽ちゃん反抗期?反抗期なのか?ていうか千果と神楽ちゃんの仲良しっぷりがこわいわ。

「もう史紀買ったかなーて思ったんだけど、一応ゼリーとかヨーグルトとか、なんか食べられそうなもん買ってきたんだよ」
「ああ、まじで?そういう系買い忘れてたから助かったわ」

良かったと笑みを浮かべ、千果は買ってきた物を冷蔵庫に入れるため一旦寝室から出て行く。
直後にふらりと体を起こした銀さんが、はあとため息をついて頭を抱えた。

「どったの」
「うるせえの来たから眠気どっか行った」
「銀さん、子供じゃないんですから…千果さんだって心配してくれて、ッゲホ」
「いいから2人共おとなしく寝ときなさいな」

釣られるように体を起こして銀時を諫める新八君。
肩をすくめながら新八君の肩を押すようにして布団に戻し、やんわりと頭を撫でた。
照れたのか顔をほんのり赤く染めて、マスクの中でもごもごと何かを喋る。すみませんって言ったのか、と数瞬後に気が付いて、軽く首を振った。
風邪引いてても新八くんは良い子だなあ。かわいいし。

「銀時もこんくらい良い子だったら…」
「いい子って、お前、俺のが年上だぞ」
「基本的に中身は2人とも似たようなもんだと思うよ」

会話に混ざりながらふすまを開いた千果は、手に冷えピタの箱を持っている。

「そろそろ温くなってると思ったから」

言いながら神楽ちゃんの冷えピタを剥がし、新しい物を貼る。
貼った瞬間のひんやり感が気持ち良かったのか、神楽ちゃんが「んーっ」と声を上げて、笑みを浮かべた。
そういえばもう温くなってきた頃だったか、うっかりしてたな。
新八くんのも貼り替えている千果から冷えピタを1枚受け取り、銀さんの分を貼り替える。神楽ちゃんとは逆に貼った瞬間の冷たさが苦手なのか、銀時はびくりと震えて顔を顰めた。

「ふ、変な顔」
「…うっせ」

ぺしん、と軽く銀さんのおでこを叩く。何すんだよと膝で蹴り返されて、今度は強めに叩いておいた。

「お妙さんも心配してんだから、3人とも早く治しなよ」
「そうそー、元気じゃない万事屋トリオなんてきゅうりの無いきゅうりの糠漬けみたいなもんなんだから」
「それもうただの糠じゃないですか」

5人して、笑う。くっだらないのに何で面白いんだろうなあ。

万事屋だからか、とすぐに気が付いて、また笑った。
あたし達を見つけてくれた、3人だから。

「あ、史紀、今の顔すげーそそるわ」
「ななな何言ってんですか銀さん!!」
「銀ちゃん気持ち悪いネ、千果、近寄っちゃだめアルヨ」
「うんもちろんわかってるよ神楽」

鼻を鳴らすように笑いを溢して、銀時の耳元に口を寄せた。

「元気になったら、また、…ね?」



(…史紀は本当にビッチアルな)(ちょおお神楽ちゃんそんなビッ……とか言っちゃいけません!)(新八くん大変そうだなあ)

 
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