嫉妬と一日局長3



お通ちゃんや他の女性と共に塔のてっぺんまで連れてこられてから、どれくらい経った頃だろうか。
女装山崎が「え!?何で史紀さん!?ドユコト!!?」みたいな顔をしていたのをにんまり見やりながらも、抵抗できない女隊士かっこ笑い風を気取りながらぼーっとしていた。
そしてやっと現れた真選組に、あたしやることないしそろそろずらかるか〜なんて思っていたのも束の間。あたしは、見てしまった。

ニィンマリ、黒いオーラを浮かべながらあたしへと笑みを向ける、銀時を。

あっこれは死ぬな。すぐにそう思った。
なんか知らんが銀さんちょう怒ってらっしゃる。何でだ。高杉のことバレた?だからってそんなに怒んなくてもよくない?激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム状態だよ。激こわガクブル丸になるよあたし。
というかバラしたの誰だ!近藤さんか千果か!くそ!あのバカ夫婦め!!


あまりの恐怖に泣きそうなのを必死に押さえ、しゃがみ込む。
これで外からはあたしが見えないだろう。銀さんの眼力はんぱねーよ、死んだ魚の目が鈍く光ってんのすっげえこええ。

でもその内銀時ここまで上ってくんだよなー…それまでにどうにかずらかりたい。
お通ちゃんは山崎が助けるから別にあたしが手出しする必要ないし、他の子たちも助かるし。
…ううん、でも最近あたし真選組での立場微妙だしなあ。ここらでいっちょ手柄立てといた方がいいんじゃなかろうか。

「…よし」

小さく呟いた。

ここに攘夷浪士は10人もいない。それくらいなら、まあ、いけるだろう。
縄はもうほどけてる、し。


しゃがんだままの状態から、すっと右横に足を出す。それにひっかかった浪士が2人、前にこけておでこを柵に激突させた。これで残り6人。
次に、懐に忍ばせておいた拳銃を取り出し、女性達を取り囲んでいる3人の浪士に向けて発砲。それぞれ右腕、左脇腹、左肩に当たった所で、山崎の縄をほどき確保を頼んだ。残り3人。
浪士の持っていた槍を奪い、浪士が今まさにお通ちゃんへと向けようとした槍をそれではじく。下に落ちてったけど大丈夫かな、まあいいか。
そのまま槍の峰で側頭部を打ち付け、残り2人。

「何やってんだ、お前は」

がんっと鈍い音がして、いつの間にかやってきていた銀ちゃんによってその2人はおやすみしていた。
次いでひょこっと現れた千果が、指示を出していたトップっぽい奴をぼこぼこにしている。そいつもう気絶してんですけど。局長を斬れって命令したのそんなむかついたのか。

「あ、お通ちゃん、大丈夫?ごめんねほんと、怖い思いさせて」
「…あ…ううん、ありがとう、川崎さん…強いんだね」

その言葉には笑みのみを返して、お通ちゃんの手を引き立ち上がらせる。

「天狗党壊滅でーす、これあたしお手柄ですよねー!?」

お通ちゃんと2人、ぶんぶんと手を振りながら真選組を見下ろす。
「よく聞こえなかったから筆談で」と、土方に返された。てめえ完全に聞こえてんだろ。


――…


天狗党の人間を無事にしょっ引き、なんやかんやでお通ちゃんの真選組一日局長騒動は終わりを告げた。
やあ今日も1日疲れたなあさっさと屯所帰ってお風呂入ってぐっすり眠りますかあ!と、車に乗り込もうとしたあたしの腕をがっしりつかむ、手。
ひいんと泣きそうになりながら、諦めて振り向いた。笑顔の銀さんが視界に映る。

「史紀は俺と話があるんだよ、な?」
「ソウデシタネ…」

車をおり、土方に「万事屋に寄ってから屯所帰ります」と泣く泣く伝えた。
銀さんに手を引かれるままその場を去る。ああ、周囲の目が痛い。

「あの、銀ちゃん?その〜…用件は大体察してるんで、お手柔らかにお願いしたいんですが」
「そりゃあ、史紀次第だな」

あたしは涙をのんだ。


(んで?高杉とナニしたんだお前は)(何の発音おかしいです銀時さん)

 
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