小さな追跡者




今日も千果は元気に近藤さんを追いかけている。一途でよい。

「近藤さあああああん愛してますうううう」

近藤さんは迷惑では無い、というかまあ嬉しそうではあるんだけども、いかんせん身長差がアレなせいでどう反応すればいいかわからないっぽい。
だってまあ見た目オッサンと合法ロリだから…仕方ないよな…。
それにお妙さんのこともあるっぽいし。

「おおお俺にはお妙さんという心に決めた人が…っ!」
「私だって近藤さんのことケツ毛ごと愛しますよ!全部全部大好きです!」
「きゅんっ…!」
「陥落早いな近藤さん」

思わずツッコんでしまった。
けど2人には聞こえてないらしい。セーフ。

千果と近藤さんには幸せになって欲しいなー。
あんなに一途ないい女そうそういないよ近藤さん。サイズはちっせえけど。心は広いよきっと。
近藤さんもお妙さんのストーカーするよかよっぽど幸せになれると思うけど。

「おいチビ!!また近藤さん追っかけ回してやがんのか!」
「ゲ、土方」

と、スパーンと襖を開いて現れた土方。既に抜刀しているのはどういうことだ。
千果はそんな土方を視界にいれたと同時に顔がすごい歪み方をしている。正直怖い。
そして近藤さんはこれ幸いと、この状況を煙草を吸いながら傍観しているあたしにごめんと手を合わせながら部屋を出て行った。あんにゃろう。

「あっ近藤さん待ってくださいよー!」
「だからてめえは毎回毎回、近藤さんにひっつくなっつってんだろーが」
「土方に私の恋路を邪魔する権利はないでしょ」

バチバチと火花を散らし合う千果と土方。
あーあ千果まで抜刀しようとしてるよ。まじ勘弁してくれなんなのこの展開。
ため息を吐いて、煙草の火を消した。

「あーもー土方やめて!ほんとやめて!お前が近藤さん大事なのはわかるけど後でこええ千果の相手すんのはあたしなんだからやめて!!」

言いながら土方の腕を逃げないようにホールドする。
ラッキーと言わんばかりの笑顔であたしを見やった千果は、即座に身を翻して近藤さんが出て行った方向へと走り出した。

「史紀グッジョブ!じゃねー」
「てめえ待ちやがれェェエ」
「土方落ち着けェェェエ!!」

素早さに定評のある千果はすたこらさっさと部屋から消える。
千果が見えなくなってもしばらくじたばた暴れていた土方が大人しくなったのを確認して、あたしは手を離した。

ら、次の瞬間には剥き身の刀があたしののど元に突きつけられていた。
思わず、どーどーと両手を前に出して苦笑いを浮かべる。

「史紀、お前、これでもし近藤さんになんかあったらどう責任を取るつもりだ…?」
「いやーなんも起きないっしょ。多分…きっと…おそらく」
「めちゃくちゃ曖昧じゃねェか!!」

おおう刀当たる。首切れたらやばいだろ頸動脈とかどこら辺なのか知らんけどあれ切れたらめっちゃ血ぃ出るんでしょ?
死ぬのは困る。ものすごく困る。
だから土方さんお願いします落ち着いて!

「ま、まあさすがに千果も、近藤さんが嫌がることは(多分)しないと思うし。(きっと)大丈夫ですよ」
「カッコの中聞こえてんぞ」
「うそーん」
「はあ…ったく」

刀をおろして鞘にしまうと、煙草に火を付け出す土方。
どうやら今回のとこは諦めてくれたらしい。まあ近藤さんと千果の行き先もわかんないしね。

座布団の上にどっかと腰を下ろした土方の隣にあたしも座り、煙草に火を付ける。
2本の煙草から流れる煙が、ゆらゆらと揺れていた。



 (お前の煙草くせえ)(土方のもなかなかだよ)

 
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