地下の花



変装用の化粧をした山崎を見て、ほう…と感嘆のため息を吐く。

「日頃から化粧映えする顔だろうなあとは思ってたけど…これほどとは…」
「あ、あんまり見んでください…これでも恥ずかしいんですから」
「いやもう自信を持っていいよこれは。すっごい可愛い」

可愛いって言われても嬉しくありませんよ、そう苦笑する山崎。
だって可愛いんだから仕方ないじゃないか。
ちょっと濃いめの化粧だから元の山崎の面影は少ないけど、それでも十分に可愛い。なんかおとなしめなのに色気がある、みたいな。

「ほら、史紀さんも着付けますから立ってください」
「はーい」

あまり自分では着慣れていない、普通の着物を山崎に着付けてもらう。
襦袢を着ているとは言え、こんな格好で密着するのも初めてだからなんか少し照れるなあなんて思っていたらあたしより山崎のが大変そうだった。耳まで真っ赤になってる。

「かーわいー」

くすくすと笑いながら真っ赤の耳を撫でる。
ぴくりと震えた山崎が、動かないでくださいよ、とちょっと怒ったような目で見上げてきた。

「ごめんごめん」
「、それに史紀さんの方が…」
「ん?」
「な、なんでも無いです!」

さいですか。

何かをもごもご言ってたようだけど聞き取れなかったのが残念。仕方ないけどもうふざけずに大人しくしておこう。
こっから先は本当に気を引き締めておかないと危ないんだし。

「潜入するのは3日間だけです。その間に情報を得なきゃいけません…けど、史紀さん、無茶はしないでくださいね」
「大丈夫だって、土方と沖田にもさんざん言われたから」
「…史紀さんは大丈夫って言いながら、いっつも無茶するからなあ…」
「んなことないって」

そんな会話をしながら車に乗り、吉原へと向かう。
吉原についてからは2人きりでのんびりと歩いて、潜入する店へ。

吉原のことはよくわからないけど、今はまだ鳳仙がいるはずだから空が見えないのは確かだ。かと言ってどんよりしてるわけでもなく、街は賑やかなのだけど。

「隊士達も性欲処理しにこういうとこ来たりすんのかな」
「えっ!?い、いやどうだろう…俺はしないけどね、俺は!」
「私、でしょ」
「あ…うん」

真っ赤になって全力否定する山崎かわいい。別に山崎が遊郭行ってようが気にせんのだけどね。まあそんなとこが好きなんですが。

「ここだよ、史紀さん」
「うわ…デカいな」

辿り着いた店を見上げる。
…ん?なんか見覚えのある女の人が見えるような。
高い所為でいまいち見えないけれど、どことなく凛とした、でも温かい雰囲気のある綺麗な女性。…ってあれ、まさか。

「ああ、あの人は日輪太夫って言って、」

山崎がそんな説明をしてくれくれたけど、途中から耳に届かず。

まさか日輪のいる店だとは…。
つっても、潜入調査で来たうちらと日輪じゃ、会うこともないだろうけど。
本当に綺麗な人。それと同時に悲しそうな人。

早く銀さんがこの街に太陽を打ち上げてくれたらいいね、と、日輪に向かって手を振った。


(…あ)

目があった、気がした。



 (空に留まる人)(地を舞う子)

 
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