子供と子供4



ひい腰痛いやばい、下半身の鈍痛やばい。
まじで沖田一発殴る…。

体のサイズはやっと16そこらくらいに戻ってきて、明日辺りには元に戻るだろうと思ってる。
山崎ももうだんだんあたしが元の体型に戻っていっているからか敬語になってきたしさん付けになったし、はあ…残念…。
いっそこのままタメ口でいいのよって思ってたけど、やっぱりそう上手くはいかないか。

「オイ、史紀」
「あ、土方」
「体はもうほとんど戻ったみてえだな…中身はどうなんだ?まだガキのままか?」
「ガキとは失礼な…もうほとんど19の時のあたしみたいなもんですよ」
「ならいい。この資料まとめといてくれ」
「まじでか」

ぺいっと簡単に渡されたのは30cmくらい厚さがあるんじゃないかって程の量がある資料の束と分厚いファイル2つ。
勘弁してくれよと思いつつも、この1週間ロクに何もしてないんだから仕方ないかと、了解ですと頷いて自分の部屋へと向かう。


近藤さんは千果が小さくなったせいでなんかよくわかんないフィルターがかかったのか、千果をもう自分の愛娘のように猫可愛がりしている。
あたしと同じく千果ももう元の姿に戻ったようなもんなのにそれは変わらずで。
遠くで近藤さんに肩車されてきゃっきゃと喜んでいる千果を見て、なんとも言えない顔になった。

まあ…千果が幸せなら別にかまわんのだけども…。それでいいのかお前…。
娘に思われてたら結婚は出来んぞ…。

「あれ、史紀さんも書類仕事ですか?」
「おおう山崎、びっくりした」
「すみません」

曲がり角でばったりと会った山崎の手にも、分厚い書類とファイルがいくつか。
話を聞けば次に潜入調査に行く場所について調べなければいけないそうで。

「次はどこ行くの?」
「それがあの吉原なんですよ…また女装しなきゃいかんのかと思うと憂鬱で」
「吉原!?」

思わず大声をあげてしまった。
は、はい…と引き気味に返答してくれた山崎の顔をまじまじと見つめ、吉原…と今度はゆっくり、繰り返す。

吉原、花魁、女装、密偵、山崎。

…いかんいかんいかん!!そんなとこに山崎1人で密偵なんか行ったらあたしの山崎がどこの馬の骨とも知らん男に汚される!!尻とか触られる!!!あれだろ酌しに行ったら帯持って「あーれーお代官様ー」とかやるんだろよくわからんけど!駄目だって無理だっていくら仕事とは言えそんなふしだらなのお姉さんは許しませんんんんん!!!

「いやお代官ごっこは無いと思いますけど」
「えっ、口に出てた?」
「あ、はい…」
「…てへぺろ」
「わざとらしすぎますよ」

くす、と口元に手を当てて山崎が笑う。

…女か!!!

可愛いじゃねーかちくしょうめ…駄目だこれは確実に掘られる。女かと思ったら男だと?でもいいじゃねーかってなる。そんなんあたしが許さない。
山崎をそんな名前も知らんような男共にやるくらいならまだ隊士達のがマシだわ!それも嫌だけどな!

「あたしも行く」
「…え?」
「あたしも吉原行く!山崎の貞操はあたしが守る!!」
「いや貞操って…って、えええ!?」

そうと決まれば話は早い。
ちょっとこれあたしの部屋持ってっといて!と山崎に書類とファイルを押しつけ、土方の部屋へと猛ダッシュでリターン。

どたばたと足音を響かせながら辿り着いた土方の部屋の障子をスッパーン!と全力で開けば、てめえ廊下は走んじゃねえ!と開口一番で怒鳴られた。
今はそんなん気にしてる場合じゃねーよ!

「今度山崎が女装で吉原に行くって聞いたんだけど」
「あ?それがどうした」

曰く、吉原のとある店を借宿にしている攘夷浪士の一派があるらしく。
その店に協力を得て花魁として潜入し、浪志共を検挙、あわよくば本拠地の場所も吐かせちゃうぜ!っていう計画らしい。
吉原の自警団、百華は吉原に害が無い限り動かないそうで。

「あたしも山崎と一緒に行きたいんですが!」
「何ふざけたこと言ってんだ…遠足じゃねーんだぞ。ヘタしたら敵に捕まって拷問もされかねん仕事なんだ。大体、潜入調査とは言え花魁としての仕事もしなきゃなんねえ、お前どこの馬の骨とも知らねェ男と寝られんのかよ」
「ビッチ舐めんなよ、お望みともあれば今ここででも脱げるわ」
「頼むから脱ぐなよお願いします」

それは冗談だけど、と改めて土方の前に正座しなおす。
あたしだって別にお遊びで吉原行きたいとか言ってるわけじゃない。そりゃ半分くらいは月詠に会えるかなとか吉原の女性達は綺麗だろうなえへへとか思ってるけど。

「男が1番無防備になんのってヤってる最中じゃん?山崎は男だからそこまでは出来ないけど、あたしなら出来る。そりゃ好きでもない男となんかヤりたかないけどさ、その方が効率良いことくらい土方ならわかんでしょ?」
「…だからってな、」
「お願い、土方さん」

真っ直ぐに土方の瞳を見つめる。
煙草の煙をくゆらせ、しばらくの間無言で考え込んでいた土方は、数分の間の後「わぁったよ」と答えてくれた。

「ただし無理はすんな。本当にヤられそうになったら逃げろよ」
「あたし金蹴り得意なんすよ」
「…お、おお…」

にこりと笑う。

土方はそんなあたしを見て、何かを言おうと口を開き…何も発することなく、その口を閉じた。
そしてしっしっと手で追い払うような仕草をして、山崎に状況教えてもらってこいと吐き捨てるように言う。
了解です、なんて敬礼をしてみれば、アホかと頭をはたかれた。



 (あたしも吉原行って良いってー!)(えええ本気ですか!?)

 
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