子供と子供2
「うわあああ千果ちゃん可愛いなー!わはははー!」
「えへへへーおじちゃんもかっこいいー!」
「そうかーカッコイイかー!でもおじちゃんはちょっとやだなー?」
場所は局長室に変わり、目の前では千果を高い高いしてくるくる回る近藤さんの姿。なんでこの人こんなテンション高いの?実はロリコンなの?
相対するように土方は頭を抱えて俯いている。まためんどくせぇことになりやがったと言わんばかりのオーラが怖いですお兄さん。
それを山崎の足の後ろから怖がるように覗いているのがあたしです。
すっかり山崎に懐いちまったねィとあたしの顔をのぞき込む沖田から、びくりと逃げるように更に山崎の後ろに隠れてみれば、山崎がよしよしと頭を撫でてくれた。
「沖田隊長はドSだけど怖い人じゃないからね、多分」
「多分とは何でィ山崎」
ほーれ怖くないぜと沖田があたしをあやすように手を振ってくる。
なにこの沖田可愛いんですけど、レアすぎる。いや日頃の沖田も十二分に可愛いんだけどいつものあたし相手と子供相手とじゃやっぱり態度違うじゃん?慣れない子供の扱いって感じが存分に出ててもうなんて言うか、一言で言うと美味しいです。ごち!
「どうやったら戻るんだコイツら」
「確か時間が経つごとに成長していくらしいですぜ?1週間くらいで元に戻るはずだったかと」
「1週間もこのままなのか…」
さらに項垂れる土方。
なんだか可哀想に思えたから、山崎の後ろからぽてぽてと出て行って頭を撫でてやった。ら、疲れたような笑みでぽすんと手を頭に置かれる。
その顔は、アウトだろ。
思わずばっと離れて山崎の後ろに逃げ帰ってしまった。土方はちょっとショックそうな顔してるし沖田は「あーあ嫌われやしたね」なんてニヤニヤしてるし。
くっそ熱くなんな顔。土方はホント駄目だから勘弁してくれ。何でそんなイケメンなんだよいっぺん殴ってやろうかマジ…。
「こんどーさん、お腹すいた」
「そーかそーかお腹すいたか!よーしお前ら!飯食いに行くぞ!」
子煩悩タイムに入っている近藤さんは千果を肩車し、すたこらさっさと外へと走り出す。
きゃああああなんて嬉しそうな絶叫をあげる千果も至福の時間そうで、まあいいんじゃないですか。
「史紀ちゃんもお腹すいた?」
「…あ、うん…少し」
「じゃあ俺達も行こっか。歩ける?抱っこする?」
ひいもう山崎が天使すぎて動悸息切れがやばい…あたし今日死ぬかもしんない…。
ちゃん付けで呼ばれるのも慣れないしタメ口なのも自分で言ったくせに慣れないしでホント顔の熱がやばい。顔超ゆるむ。ほっぺの筋肉仕事してください。
「…抱っこ」
「了解」
よいしょ、と抱き上げられる。はああん山崎の顔近いよう!もうやだ死にたい!いや生きる!!生きて山崎と結婚する!!
もうなんか感動なのか歓喜なのか羞恥なのかよくわからない感情の嵐で涙出そう。
心の中でぐるぐる悩んでいたらぶに、と沖田にほっぺを突かれた。
「おー、ぷにぷにでさァ」
「何すんの」
「今の顔、いつもの史紀にそっくりだな」
山崎とあたしを真ん中にして、両側に土方と沖田が立って廊下を進んでいく。
ぷにぷにとほっぺをつつき続ける沖田に対して、土方はなんか微妙な顔だ。どうしたお前。
何回もあたしを見ては目をそらしを繰り返す土方に怪訝な顔をしていたら、すっと何かを土方が取り出した。
「…食うか?」
何かと思えば、マヨネーズ。
「…いらねーよ」
「…可愛くねーガキだな」
「そんな油の塊なんざ誰も欲しがりやせんよ」
「んだとコラ総悟ォォオ!」
逃げる沖田を追いかけ、廊下の向こうへと消えていく土方。つーかお前らも子煩悩タイムですね本当にありがとうございました。
そんな2人を見送って、小さく笑っていれば山崎が「騒がしくてごめんね」と申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる。山崎は悪くないのに。
「大好きな退おにーちゃんといられるから気にしないよ?」
「、そっか」
よしよし、とまた頭を撫でられる。
あたしから視線をそらした山崎が、その直後にぽつりと呟いた。
「俺も、…史紀さんのこと大好きですよ」
「…え、」
「ううん、何でもない。さ、ご飯食べに行こう」
「あ、…うん」
顔が真っ赤になるのが自分でも分かる。熱い、熱い。沸騰しそう。自分の手でほっぺを触ってみたら熱出てんじゃないかってくらい熱かった。
なにこの子、ほんと…山崎、兵器すぎる。
(おにーちゃん、顔赤いよ?)(いや、うん…大丈夫だよ)
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