紅色の空4




心配そうにあたしの顔を伺う千果に大丈夫だよ、と笑って頭をぽんと撫でる。

高杉の船に入り込めたのはいいけどこれからどうしようか。
真選組の隊服で来たのは失敗だったかもしれん。もう堂々と敵ですって看板掲げて歩いてるようなもんだからね。真選組って書かれた旗持って歩くようなもんだからね。

「とりあえず千果は神楽を探して保護頼める?」
「いいけど、史紀はどうすんの?」
「もち高杉見に行く」
「あ、ああそう…」

なんだよそんな「心配して損したわ…」みたいな顔すんなよ。泣くぞ。

一応これでもあたし自分の力量わかってるからね、無理してることぐらいわかってるからね。
だからこう敵と戦う可能性が高い神楽救出を千果に任せて、あたしはこそっと活動しておこうっていう…うんまあいいや。

「黙って来ちゃったし、ついでに何人かしょっ引いてやろうぜ」
「おうよ!」

千果とハイタッチして、正反対の方向に分かれて歩き出す。
今頃高杉はどこら辺にいるんだろうか。似蔵となんやかんやしてる時だったらやだなあ。
ていうか似蔵に会いたくない。嫌いじゃないんだけど、目の前に立ってわかったんだよね。
あー勝てねえな、って。

斬り合いになったらあたしなんかすぐ殺されるだろう。
そんな相手にわざわざ会いたいなんて思うわけがない。そこまで無謀じゃない。


「さて、と」

船内をある程度うろついたところで、腰に両手を当て一息つく。
右見て左見て、後ろを見て前を見る。

うん、なんというか、あれだ。

「迷ったな」

方向音痴なつもりはないんだけども。
この船がごちゃごちゃした作りなのがいけないんだ、きっとそうだ。

まあ適当に歩いてたらその内外に出るっしょ。今自分が建物として考えた場合何階にあたる部分にいるのかすらわからんけど。

「おい、何してんだてめえ」
「えっ」

聞き飽きるほど聞き覚えのある、低い声。

背後から聞こえてきたそれと、そして身が竦むほどの殺気。後頭部に突き付けられているだろう、刀の気配。
…やっべえ…やべえ。高杉だ。

「真選組…か?1人でンなとこまで入ってくるたァ見上げた根性じゃねェか」

振り向けない、怖い。ちびりそうやばい。びびってちびる女主人公なんて聞いたことねーよやべーよ。
とりあえずハンズアップして敵意は無いですよアピール。つっても服装が攘夷志士にとっちゃ敵意の塊だけど。

「そういやァあいつが真選組にイイ女がいるっつってたな…もしかしてテメエか?」
「あいつって誰だよ…」
「岡田似蔵だ」
「あっ聞こえてたんですかすみません」

すごいちっちゃい声で言ったつもりだったのに…高杉耳いいなお前。
そんで素直に答えてくれるとか意外といい人だね!その刀をおろしてくれればもっと良い人だと思えるのにな!

ひぃ帰りたいでも顔は拝みたいなんて泣きそうになってたら、刀がおろされる気配を感じて強ばっていた体の力がやっと抜ける。
恐る恐る振り返ってみれば、妖しく笑う高杉の姿。
はあんやばい生で見ると余計かっこいい…抱かれたい…。

「確かに面は良いが…どこにでもいる普通の女じゃねェか」

なんか言ってるけどまあいいや。
ほぼ無意識に近い動きでポケットに入れていた携帯を手にし、高杉に向けてボタンを押せばピロリーンと軽快な音が鳴る。
突然のあたしの行動に虚をつかれたらしい高杉はぽかん、としていて、その顔をあたしはまた連写モードでばっちり撮影した。

いえーい高杉の写メゲットだぜ。あたしの銀魂フォルダがどんどん潤っていくね!

「…何してんだ」
「写メです」
「それぐれェわかる」
「あっ本人に確認もなく撮ったらいけないんですよねごめんなさい。撮って良い?」
「事後報告にも程があんだろ…」

意外と話にのってくれる高杉が面白いんだけどどうしようこれ。
いつの間にか怖いって感情もどっかいったわ…ちびらずにすんで良かった。ホントに。

がさごそとメモ帳とペンを取り出し、なんならサインもしてくれて良いですよ!と満面の笑みを浮かべる。
端から見ると、真選組の一員と鬼兵隊のトップがまったり会話しているというシュールな光景なんだけれども。我ながらウケる。

「クックッ…!確かに面白ェ女だ」
「褒めないでください照れます」
「褒めてるわけじゃねぇよ」



 (あれなんだこれ、デジャヴ)

 
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