紅色の空2




千果はいったん真選組の屯所に戻った。本人は銀さんの怪我の具合を気にしていたようだけれど、連絡をしているとは言えあたしも千果も屯所にいなかったら訝しむ人がいる。
それを防ぐためにも、千果には帰ってもらうことにした。

手当てをして布団に寝かせた銀時は、今はお妙さんが看てくれている。
傷は深い。あの銀さんがなかなか目を覚まさないんだから、相当なものなんだと思う。
結局何も、助けられなかったなとぼんやり、宙を見つめた。

居間のソファーで無言のまま俯いている新八くんに、いれたばかりのお茶を差し出して隣に座る。
僅かに首を傾けてあたしを見上げた新八くんの頭をやんわりと撫でて、温かいお茶に口を付けた。
つられるように、新八くんもお茶を飲む。

「…感触が、消えないんです」

ぽつり、聞こえるか聞こえないかくらいの声で新八くんが呟く。

「あの時は必死で、銀さんを守らなきゃって、それだけを考えて突っ込んでいきました。でも、今はあいつを斬った感触が消えなくて、今も僕の腕に…っ残って、て」

両手を見て続ける新八くんの体が、少し震えていることに気付いた。

あたしも煉獄館の時、初めて人を斬った時は最悪な気分だったなあ。それでも、あれは自分の意志で決めたことだったからすぐに吹っ切れたけど。
今じゃ真選組の仕事でも平気で人を斬る。その感触にも、もう慣れた。
それが良いことか悪いことなのかなんて、わかりたくもないけど。

「新八くん」
「、史紀さん…?」

軽く両手を広げて、おいでと呼びかける。
数秒の戸惑いの後に、おずおずとあたしの腕の中に収まった新八くんをぎゅうと抱き締めて、ゆっくりと髪をすくように何度も頭を撫でた。

「人を斬る感触なんて、知りたくなかったよね」

こくり、無言で新八くんは頷く。

「でも、銀さんを守る事が出来て良かったって、思ったんだよね」

今度は2回、こくこくと首を縦に振った。
胸元に感じる湿り気。
泣いてるのかなと思ったけど、気付かないふり。

「よく頑張ったね、新八くん」

あたしは何も出来なかったんだよ。
似蔵を前にして動けなかった。手が震えた。

なのに新八くんは動いて、銀時を背に彼を守ったんだ。
それはとてもすごいこと。
あたしにはとても、真似が出来ないこと。

「新八くんは頑張った。新八くんが銀時を守ったの。君はその腕の感触を、誇っていい」
「…はい、…っはい」

ぐすぐすと腕の中で震える新八くんが落ち着くまで、ずっとその背中を撫で続ける。
この小さな体の温もりが、銀さんのかけがえのない宝物なんだなと思うと、よくわからない涙がまたじわりと滲んだ。

守りたいと、思った。



 (史紀さん?新ちゃんに手を出さないでくださいね?)(ひぃすみませんお妙さん違うんですこれは)

 
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