健全男子の恋愛


モブ男→沖田のホモ注意。沖田出てないけど


真選組は男所帯だ。
辛うじている女と言えば、家事諸々をしに週1くらいで来てくれている女中さんと食堂のおばちゃん、それにあたしと千果くらい。
更に言えば女中さんも食堂のおばちゃんも、4、50歳そこらの年齢。それは多分、隊内で恋愛事が起こらないようにっていう配慮?なんだろうけど。

歴史のことを調べたりしていると、昔のこういう場所では衆道、つまるとこのホモとかBLの類はよくあることだったらしい。
新撰組しかり白虎隊しかり。
まあ詳しくは知らないんだけど。多分あたしより千果のが詳しいと思う。


んで、何でいきなりそんなことを考えているのかっていうとだ。

「川崎さんは沖田隊長の何なんですか!!僕の敬愛する隊長をたぶからさないでください!」
「言えてねーよ。たぶらかす、な」
「わわわわかってますよ!川崎さんの教養をチェックしたんです今のは!!」

あたしの目の前でばんばんと机を叩いて憤慨している様子の少年…青年?まあこいつが原因なわけで。


有賀祐之介。
1番隊所属の20歳。身長はあたしと沖田の中間くらいだ。男にしては低い。
それなりに可愛い顔をしてるから女受けは悪くないと思う。
ただ、バカ。天然バカ。
あたしは乙女ゲーにいたらそこそこ人気が出るキャラなんじゃないかと会う度に思ってる。

まあなんだ、そいつが沖田のことを好きらしく。
原作でも神山だったかって隊士になんかそれっぽいこと言われてたし、確かに沖田は女顔だから仕方ないとは思うけど…うん。

「だいたい川崎さんは誰彼構わず色目使ってるじゃないですか!そんなのふしだらですよ!」
「別に誰彼構わずは使ってねーよ。ちゃんと人を選んでますぅ」

その時近くを通りかかった、昨日夜食を頼まれて用意してあげた隊士に「あっお嬢、昨日はありがとうございましたー!」と話しかけられる。
気にしないでまたいつでも言ってくださいね、と笑って返し、有賀の方に向き直ったらその体はわなわなと震えていた。

「ほら見ろォォォ!」
「今のは違ぇよ!!」
「どこが違うんですか!副長にも局長にもいっつもにこにこ近づいてって」
「いやあたしがいつニコニコしたよ。どっちかっつーと土方にもてめえたまには笑ってみろやって言われる方だよちくしょう。まず近藤さんには手ぇ出さねえっての!」
「隊内には川崎さんをオカズにしてる奴もいるんですよ!!」
「それこそ知らねーよ知りたくもなかったよ!!」

ばん!と畳の上に叩き付けられたのはあたしが写ってる写真数枚。
おっこれなかなかナイスショットじゃね、盗撮の割りにはよく撮れて…、ってなんで警察が盗撮してんの?この組織大丈夫なの?

「こんな写真が1枚1000円で売りさばかれててしかも毎回数分で売り切れするくらい大人気だってわかってんですか!」
「…その金あたしによこせよもう…」

だんだん有賀に合わせてキレるのも疲れてきたあたしがため息混じりに煙草に火を付ければ、有賀の顔がこれでもかってくらいしかめっ面になった。

「健康第一の侍がそんなもの吸うなんて…副流煙のことも考えてください!この侍失格!」
「いやあたし侍じゃねーし。てかそのセリフそっくりそのまま土方に言ってこいよ」
「沖田隊長がもし肺を患ったらどう責任とるつもりですか!」
「だから土方にも言えって」

ともかくこいつは煙草が嫌いらしい。さっきからあたしが吐いた煙をどっから出したのかわからないうちわでぶんぶんと避けている。
嫌煙家の前で吸う気にもなれず、吸い始めたばかりの煙草の火を灰皿に押しつけ、消した。

「そうやって大人しく沖田隊長からも手を引いてくださいよ」
「有賀くん」
「…なんですか」
「気持ちの大きさ云々は置いといて、あたしも沖田のこと好きなんだよね。だから君に手ぇ引けって言われる筋合いもそれに従う義務もない。そんなに沖田が好きなら奪い取れば?」
「…っそれが出来たら、苦労しない」
「んじゃそこまでの気持ちだったってわけだ」

――違う!!
叫びながら、有賀に襟元を掴まれる。

柄にもなく余計なこと言っちゃったかなーなんて思いながら、真剣な瞳であたしを睨む有賀のほっぺたをぶに、と両手で挟み込んだ。

「な、なにす」
「だいたいまず沖田はあたしの物でもないし、有賀くんの好きにすればいいじゃんか。同じ隊なんだし、チャンスはいくらでもあんでしょ」
「チャンスなんて…普通、男は女を好きになるもんですよ」

あたしから手を離してしゅんとする有賀の前に座り直す。
箱から煙草を取りだそうとしたところでさっきのことを思い出して、箱を机の上に戻した。
代わりに引き出しの中にあるあめ玉を取り出して口に含み、もう1つを有賀に手渡す。

「昔どっかで聞いたんだけど、異性を好きになるのは子孫を残そうとする本能が作用するらしいよ。でも同性じゃ子孫は残せない。だからこそ相手の本質、中身に惚れてんだろうって」

誰から聞いたんだったかな。

「有賀の恋愛は、至って普通だよ」

ぽんと肩を叩いて、立ち上がる。
少しの間きょとんとしていた有賀は、ばっと立ち上がってあたしに目線を合わせると、次の瞬間口を大きくあけて叫んだ。

「そんな良いこと言って慰めるくらいなら沖田隊長とアレとかソレとかすんのやめてくださいよ!!」
「お姉さんには聞こえませーん」
「僕の方が年上ですし!!」

有賀祐之介。
ぎゃーぎゃーうるさいけど、なんだかんだ、嫌いになれない奴である。



 (あっ沖田)(えっどこですか隊長ォォオ!)



――
有賀祐之介
(ありがゆうのすけ)

多分これからもちょくちょく出てくる沖田好きな野郎です。よろしくね。


 
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