月見で一杯




夜7時。
仕事も終えてお風呂もあがって、浴衣姿にタオルを肩にひっさげた状態のあたしはとてとてと廊下を歩きながら山崎を捜していた。
まあ別に山崎じゃなくても、沖田とかでもいいんだけど、どうせならやっぱり山崎がいい。かわいいし。いや沖田もかわいいけど。
やっぱり山崎と親交を深めたいっていうかさあ!

なんてことを考えていればいつのまにか辿り着いていた山崎の自室。
明かりついてるし、いるかな。
軽く障子をノックし、声をかける。

「山崎、入って大丈夫?」
「え、史紀さん?あ、ちょ、ちょっと待ってください」

慌てるような声と、ばたばたと何かを片付けている音。
障子の向こうでどたばたしてる山崎が可愛くてくすくす笑っていたら、ゆっくりと障子が開いた。

「お待たせしました…どうしたんですか?」

お風呂上がりだ…なんて、ぼそっと呟いた声が聞こえてきて思わず照れる。こいつまじ可愛い襲いたい。
いや落ち着けあたし、そして去れ煩悩。

「ちょっと懐かしいもん貰ったからさ、山崎相手してくんないかなーと思って」
「相手…ですか?」

右手にひっさげた酒瓶と、左手に持っている箱を掲げて山崎に見せながら、にこっと笑う。

「時間あいてるなら、一戦どうよ」
「…史紀さん…。じゃあ、是非」
「っしゃ、決まり!」

山崎の自室にお邪魔し、座布団の上に腰をおろす。
テーブルには酒瓶とコップを置いて、机の上にが持ってきた箱を置いた。
不思議そうに箱を眺めてる山崎に開けていいよ、と酒瓶の栓を抜きながら言えば、山崎はおずおずと箱を開いた。

「あ、花札…ですか」
「うん。銀時が仕事の依頼人から貰ったらしいんだけどいらないからやるって、くれたんだよね。でも千果は花札出来ないらしくてさあ」
「俺もあんまり…こいこいなら出来ますけど」
「大丈夫大丈夫、あたしもこいこいしか出来ないから」

親番を決め、こいこいの形に花札を並べていく山崎。ちなみに親はあたし。
あたしはコップにつぎ終えた酒を山崎と自分の前に起きながら、さてどうしたもんかと手札を眺めた。

「山崎ってこいこい強い?」

とりあえず取れそうな桜の札をとりながら、問いかける。
この手札だと花見酒かタン辺りが妥当かなあ。

「いや、どうでしょう…そんなにやらないんで。史紀さんは?」

山崎が紅葉に鹿の札をとり、次いで牡丹に蝶の札をとった。
うわ、猪鹿蝶リーチじゃん。

なんだかんだいって強そうだとは思ったけど。ていうか山崎ってこういうゲームの運は良さそうなんだよね。

「あたしもオンゲーでちょこちょこやってた程度だからそうでもないかな。あ、タンと赤短できた」
「え、」
「こいこいはしませんーっと」
「ちょ、ちょちょっと待ってくださいよ史紀さん、こいこいしましょうよ」

やだよ山崎猪鹿蝶リーチだもん、と呟いて札を集め混ぜ始める。
うー…なんてしょんぼり、うめき声をあげている山崎がかわいいけど、勝負は勝負。ていうかむしろこういう山崎可愛いからもっと見たくなる。

「なんか史紀さん、沖田隊長みたいな顔になってますよ」
「気のせい気のせい」
「……」

ジト目で見られたけど気にしない。

次に配られた手札の中には、場と合う札が一枚も無かった。ありえない。
とりあえず桐のカス札を場に出し、山札から引いた牡丹のカス札と場にあった牡丹に蝶の札が合ったので、それを自分の脇においた。


 (さて、と)(どうなるかなー)

 
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