アイドルとマスコット




食堂で晩ご飯の和風ハンバーグを食べていたら、出入り口の方からふらふらと負のオーラを背負った千果がこっちに向かって歩いてきた。
そのままどさりとあたしの隣に腰を下ろし、どっから出してんだってくらい低いため息をつく。

どうせ近藤さん関連だろうと思い、ちらっと千果を見はしたもののすぐに視線をハンバーグに戻す。
と、千果は両手を握りしめてばんっ!とテーブルを叩いた。
その音に反応して、食堂にいる隊士達の目があたし達に集まる。

「何で近藤さん屯所にいないのォォ!絶対またお妙さんとこじゃあああん!!」

ぐすぐすと本当に泣いてはいないだろうけど泣き声を漏らしながら叫ぶ千果。
千果が近藤さんラブなのはもう隊士達の中では周知の事実なので、こっちを見ていた隊士達の視線は驚き混じりのものから憐れみにかわっていた。
おい千果、同情されてんぞ。

「元気出してくださいお嬢、俺の麻婆豆腐半分あげるんで」
「俺のほっけも食ってくだせェ」
「りんごもどうぞ」
「わーい、みんなありがとー!」

現金な奴である。
隊士達が置いていった食べ物をもぐもぐと幸せそうに食べる千果を見て、隊士達の視線がまた変わった。今度はなんかあれだ、ほっこりしてる感じ。

まあ隊内でもあたし達は若い方だし、その上千果みたいにサイズもちっちゃくてかわいいとなれば隊士達が自分の子供のように思うのも仕方ないか。
中には自分の家族とかにもあんまり会えない人だっているんだろうしな。

「つーかそんなに気になんならお妙さんの店まで行きゃいーじゃん。お妙さんもその方が喜ぶんじゃねぇの」
「今日はそこまでアクティブな気分じゃない」
「へえ、珍しい」

近藤さんの為ならどこまでもって感じだと思ってたけど、意外とそうじゃない時もあるのか。

食べ終えた和風ハンバーグの食器を片付け、まだ食べている千果が食べ終えるのを待つ。
ごちそうさま!と手を合わせて食器を片付けに行った千果と並んで食堂を出て、自分達の部屋へと向かった。

「そーいや昼頃銀ちゃんから電話があったよ」
「は?どこに」
「私の携帯。史紀が出ないからかけたって」
「あー、携帯車ん中に忘れてたんだった。多分今土方が使ってる車だわ、メールしといて」
「りょーかい」

しかしあたしが出ないからって千果にまでかけるなんて、よほどの用事だったんだろうか。だったら悪いことしたなあ。
土方も車ん中であたしの携帯鳴りまくってて鬱陶しかっただろうな。ごめんと心の中で謝っておく。

不意に、隣で携帯を弄っていた千果がぷっと吹き出す。
何事かと目線を向けてみれば、携帯の画面を見せられた。

「…まじか」

画面には土方からの返信メールが映し出されていて。
そこには、携帯が何度も鳴ってうるさかったから出てみれば万事屋の野郎で、しかもすぐに切ったと思えば数分後たまたま鉢合わせたとこでいきなり斬りかかられた、と。

そら土方には悪いことしたね、きっとあたしと土方がデートでもしてると思ったんだろうね。銀さんの早とちりめ。

「コンビニ行ってお詫びのマヨネーズでも買っとくかなあ…」
「あ、じゃあ私肉まん食べたーい」
「何でお前にまで奢らなきゃいけねェんだよ」



 (肉まんうまー)(結局奢らされたし…)

 
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