独占欲と我慢




抱きつくを通り越してもうのしかかるみたいな状況になっている銀時を押しのけながら、煙草の火をもみ消す。
久しぶりに1人で万事屋来てみればこれだよ。
新八くんと神楽ちゃんにお金握らせて放り出して、これから俺は史紀と大人の時間なんですぅーなんて言って。
あたしは新八くんも愛でたかったのに!ちくしょう!銀ちゃんも好きだけど!

「ちょ、ほんと重いっていつまでのしかかってんの」
「史紀への愛の重さだよ、俺の」
「なにドヤ顔してんの?腹立つんだけど。ダイエットしろ」

なんとか銀さんの下から抜け出し、新八くんが出て行く前にいれてくれたお茶に口を付ける。
ついでに茶菓子の煎餅ももらおうと手を伸ばしたら、銀さんにその手をとられた。

「お前と2人きりになるの結構久しぶりじゃん。銀さん結構溜まってんだよねー」
「あたしはそうでもないけど」

銀ちゃんに掴まれてない方の手で煎餅をとり、ばりばりと咀嚼する。やっぱ醤油煎餅は美味しいよねー。あの白っぽくて甘い煎餅も好きだけど醤油には勝てないわ、うん。

あと残り一欠片、それを口に放り込もうとしたら、ぱくんとあたしの口元に顔を近づけた銀時にそれを奪われた。
そしてそのまま、キスをされる。
びっくりはしたものの大人しくそれを享受していたら、がり、と唇を噛まれた。

「いっ、え、何するんすか…」
「俺を嫉妬させた罰。前にも言ったろ?俺結構独占欲強いタイプだからって」
「あー…ごめん」

ぺろりと噛まれた場所を舌で舐めてみたら、血の味。結構痛いんだけど。血が出るまで噛むってどんだけだよ焦るわ。

「ホント、史紀が真選組にいんの俺反対なんだけどなァ。多串くんと沖田くんはいるしジミーも予備軍ぽいし」
「土方にはあたしが手ェ出さないから大丈夫だよ」
「何で、お前イケメン大好きだろ」
「人をビッチみたいに言うな」
「その通りだろが」

言い返せないつらい。
いやまあビッチなのは自覚してるけどさあ!なんかこういろいろあるじゃん?別にただイケメンだからみんなのこと好きなわけじゃないよ!

「あたし女がいる男には手ェ出さない主義だから、どんなに好みでもね」
「アイツあんな性格で女いんのかよ」
「さあねー、だから正直銀ちゃんからもそろそろ手ェ引いた方がいいかなってたまに思う」
「は?何で。わりーが俺には女なんて1人もいねェぞ」

銀時がどう思ってるかはともかく、あんたのことを好きな女の人はいるんだよバカ。さっちゃんとか。
お妙さんはどうかわかんないけど、少なくとも嫌いではないだろうし。その内九ちゃんや月詠さんも出てくるからなあ…。
その時にあたしが銀さんとこんなセフレ紛いな、紛いなっていうかセフレそのものだけど、こんなんしてたらなんかアレだし。

もんもんと考えていたら、ちゅうとまたキスをされた。
今度はさっき噛んだ場所を舐めて、いたわるような優しいキス。

「俺ァ史紀が欲しいんだよ。こんなカタチでもたまには俺のモンになってくれっから我慢してんじゃねェか」

目が笑ってない、目が笑ってないよ銀さん。シリアス銀さんになってるよ。

ちゅ、ちゅ、と唇をどんどん下降させていきながら、銀さんは上目遣いにあたしを見つめる。
うわあやめてその目、惚れるだろ。

「なのに史紀が俺から離れてくってんなら…」
「…離れる、なら?」
「そうだなァ、監禁して、もう銀さんしか見えないよーに調教すっかな」
「…ごめん被るわ」
「なら俺から離れるなんて言うんじゃねェよ」

ぎり、手首を強く掴まれる。
ただでさえ男と女で、しかも銀ちゃん強いんだから力の差半端無いのに、そんな強い力で掴まれたらあたしの腕折れそうなんですけど。

「だからもし離れるつもりだってんなら、今の内に逃げた方がいいぞ?」
「人の手首折れそうなくらい握りしめておきながらよくもまあ」

逃がす気なんざ端からねーだろ。
呆れてため息をつけば、銀ちゃんの手の力がゆるむ。
ひー、赤くなってるよ。どんだけの力で掴んでんの。

「一応あたしも銀時が好きでここにいるんだし、当分は逃げるの保留にしとくわ」
「そうしてくれ」

くすりと銀時は笑う。

「お前が誰も見てねェ内なら、俺にも希望はあっからな」

言いながら、はだけた着物からのぞいた胸元にキスを落とされる。
直後にぴりっとした痛みが走ったから、きっと痕が残っただろうな。ああまた沖田がうるさくなるなんて思っていたら更にその上からがりと歯を立てられた。エスパーかお前。


確か胸へのキスは、所有を意味するんだったっけか。

そんなことを思い出して、少し頬がゆるんだ。



 (せめて体だけでも俺のモンになればいいのに)(それは難しいなー)

 
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