喫煙家の休息




屯所にて、昼の2時過ぎ。

あたしは遅めの昼ご飯を土方の部屋で食べているところである。
土方はあたしの向かいに座って煙草を吸いながら書類整理中。いつもお疲れさまなこって。

「ごちそうさまでした!っと」

ぱん!と両手を合わせて食事終了。
空になったお皿の載ったお盆を脇に避けて、土方の近くに移動する。
目的は灰皿。

自分の煙草を取り出して口に咥え、ライターをごそごそと探していたら、ふと火のつく音が聞こえた。
目の前には、あのマヨライターを構えた土方の姿。

「あ、ありがとー」

ありがたくその火を頂いて煙草に火を付ける。
一口吸って、吐きだした。
やっぱり食後の煙草は格別にうまい。

土方がサインや判子をした後の書類をぱらぱら見ながら、灰皿に灰を落とす。

「…お前、本当に二十歳なんだろうな?」
「前からそう言ってんじゃん。土方その質問30回目くらいだよ」
「どっからどう見ても総悟と同じくれぇかそれ以下だろ」
「童顔ですんませんでしたね」

まあぶっちゃけ19歳なんだけど。
酒はいいのに煙草はダメってこの世界の法律ほんと意味わかんない。
でもこの世界にあたしや千果の身分証明出来る物なんて1つもないんだし、年齢どころか名前だって偽ったってなんの問題もないんだ。
20歳も19歳もそんな変わらないって。

土方は不服そうにため息を吐いて、あたしから目線をそらす。
仕事も大変そうだし、そろそろお暇するかね。

灰皿に煙草を押しつけ、立ち上がろうとした時。
ばーっん!と勢いよく部屋の障子が開いた。

「ト、トシ!ちょっと匿ってくれ!」
「近藤さん!?いったい何があったんだ」
「いや大したことじゃないんだ、本当に大したことでは」

猛スピードで部屋に入ってきて押し入れの中に隠れたのは、近藤さん。
あの冷や汗っぷりから察するに、どうせまた千果がなんかしたんだろう。
あたしの予想は大当たりらしく、縁側の方から障子を開け閉めする音と共に「ここにもいなーい、ここにもいなぁい」って近藤さんを探す千果の声が聞こえる。
これもはやホラーだろ。

ちらと近藤さんの方を見やれば、しー!しー!と人差し指を口元にあてていた。
ほほう、黙っておけと。自分の居場所を知らせるなと。そうおっしゃいますか。

だが残念だったな近藤さん、あたし千果の味方なんだわ。

にこりと近藤さんに笑みを向ければ、彼も浮かべる安堵の表情。
そのままの笑顔で土方の部屋を出たあたしは、2つ3つ程離れた部屋でホラーをやってた千果にちょいちょいと手招きをした。

「史紀!近藤さん見なかった?」
「またなんかしたのかよお前」
「なんもしてないよ!ただ昼寝してる近藤さん襲って既成事実作ろうとしただけで」
「お、おお…」

してるやんけ。

その一言を必死で飲み込んだ。

「土方の部屋の押し入れん中に近藤さんいっから。あんまやりすぎんなよー」
「史紀もヤりすぎんなよー」
「うっせえ」

場所さえ聞けばもう用はないと言わんばかりに土方の部屋へ突撃していく千果。
ほんとにあいつは、まっすぐだよなー。

「近藤さああああん!!」
「あんぎゃあああああ」
「てめえチビ近藤さんを犯罪者にしようとすんなっていつも言ってんだろうがァァァア!!」

いやーほんと、千果は好きな人に対して真っ直ぐ向き合えて羨ましいわー。まじすげえわー。

「史紀お前知らんぷりしてんじゃねェェエ!!」

まじ千果尊敬するわー。



 (近藤さん近藤さん大好きです近藤さん!)(いやうんあの、ははは…)

 
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -