負の連鎖




「最近なんか見られてる気がする」
「何に?近藤さんに?」
「それだったらむしろ喜ぶわバカヤロー」

喜ぶんかい。

「まあお前見た目は可愛いもんな」
「中身もかわいいよ!」
「自分で言うなバーロー」

千果の話を聞きながら牛乳をごくりと飲み、眉を寄せる。
にしても見られてるって、ストーカーか?
ストーカーのストーカーをストーカー…どういうことだってばよ。もうあたし意味わかんねーよ。

あたしたちの話を近くで聞いてた土方が怪訝そうな顔をして煙草の煙を吐き出す。

「もしかしたら私のストーカーかもしれない」
「近藤さんがお妙さんをストーカーしてその近藤さんを千果がストーカーして更に千果をストーカー?」
「負の連鎖だな」
「まさに悪循環ってやつか。いや循環はしてないか」
「2人とも真面目に聞いてくれない?」

千果がゆらりと刀を構える。
どーどー、と両手を前に上げ苦笑いを浮かべながら落ち着くよう訴える。

深いため息をつきながら座り直した千果が、ぼそぼそと頬を膨らませながらしゃべり始めた。

「なんか外歩いてたらいっつも視線感じるしさあ、この前お風呂入ってた時なんかフラッシュみたいな光見えたしー」
「ああ、屯所の風呂って無駄に開放的だよね」
「もともと男所帯だからな」

絶対ストーカーだよーもうやんなるー、机にぐだっと体を倒して嫌そうな顔をする千果。
あたしはストーカーなんかしたこともされたこともないからよくわからん。キモイってことはわかるけど。

「ちょうどいいじゃねーか。近藤さん追っかけんのやめてそのストーカーと幸せになれよ」

煙草を灰皿に押しつけ火を消して、土方がめんどくさそうに吐き捨てる。
いやそれはダメだろって言おうと思ったら、千果がばん!と机を叩いた。

「何でストーカーなんかと幸せになんなきゃいけないのさ!!」
「お前今自分で言った台詞よく考えろ」

近藤さんもストーカーじゃねーか。

「兎にも角にも、今のとこ実害はねェんだろ?俺らに言われてもなんも出来ねーよ」
「だから性犯罪が増えるんだよ。やっぱりどこの世界も警察は腐ってるね、ヤられてからじゃ遅いんだよ!ねっ史紀!」
「あたしに振んな」
「じゃあ警護に隊士1人つけてやるからそれで我慢しろ」
「はいはい!近藤さんがいいです!千歩譲って沖田で」

たかが1隊士の警護に局長つけられるわけねーだろ、土方が千果の頭をはたく。
まあそりゃそうだよなー、沖田だって一応隊長だし。

「テメーら2人で一緒にいりゃいいじゃねーか、真選組を巻き込むな」
「私たちだって真選組なのに」
「一応だろ」

ほんと土方頭固いな。

まあいんじゃね、とはたかれた場所をさする千果の頭をぽんぽんと撫でてやる。
唸りながら片手に持っていたレモンスカッシュをぐびぐびと飲んで、千果はため息をはいた。

「まあ当分は1人で行動しないようにしなよ。あたしも出来るだけ一緒にいるようにするから」
「でも史紀って山崎見つけたらすぐそっち行っちゃうじゃーん」
「それは近藤さん見つけたお前も一緒じゃね」

ともかく、ストーカーなんざ女の敵だ。あんまりストーカー卑下しすぎると身内にいろいろ降りかかるからアレだけど。
さっさと見つけて逮捕するなりぶっ飛ばすなりして、千果の不安をぬぐってやんなきゃなー。



 (ストーカー捕まえたら馬の糞の中に捨ててやる)(お、おお…)

 
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