君と朝食



「おはよー」

声をかけながら、がらりと万事屋の扉を開けた。
玄関先に腰を下ろしてブーツを脱ぐ。

そこでふと、神楽ちゃんのブーツが見あたらないことに気が付いた。
定春の散歩にしても早すぎる時間だし、昨日からお妙さんの家にでも泊まってるのだろうか。
新八君の靴もないし。靴っていうかなんていうか…まあいいや。

脱ぎ終えたブーツを玄関の隅にある銀さんのブーツの隣に揃える。
立ち上がりながら振り向いて奥にある台所に向かおうとした、んだけど。

「わぶっ」
「おっはよー、史紀」

いつの間にやら背後に立っていたらしい銀さんにおもっくそぶつかり、あたしの体はそこで止まった。

「銀ちゃん…気配消さないでよ」
「わりーわりー」
「謝る気皆無だな」

銀ちゃんはそのままあたしの腰に腕を回して、ぎゅううと抱きついてくる。
朝からお盛んなことで。いやむしろ朝だから盛ってんのか。

ぽんぽんと右手で銀さんの背中を叩く。
むすっとした顔をしながらも、銀ちゃんは大人しくあたしから腕を離した。
けど、体を離す瞬間にちゅーしていった。
それを普通に受け入れるあたしもあたしなんだけどね。

「史紀、男くせえ」
「あそ」
「今日は誰だよ?土方か、沖田くんか?」
「浮気を問いつめる彼氏みたい」

くすくすと肩を震わす。
笑っているあたしとは正反対に銀時はかなり真剣そうな瞳で。

「…朝ご飯、何作ればいい?」

面倒事は嫌い。
あたしは好きな人には好かれていたいだけだし、それを誰かに止められるなんてまっぴらごめんだ。
まあ、やってることがいけない事だってことはわかってるんだけど。

不機嫌そうに眉を寄せて、でもすぐに深いため息を吐いた銀ちゃんは、焼き魚、とぼそり呟いた。

辿り着いた台所の冷蔵庫を漁りながら生返事をする。
ちょうど賞味期限が今日までの鮭の切り身を発見し、それを冷蔵庫から出した。
あとは大根とにんじんがあるし、味噌汁くらいでいいだろう。ご飯はもう炊いてあるし。

「じゃあ作ってくるからリビングで待って、て…」
「でもその前に、」

隣とはいえ少し離れた位置に立っていたはずの銀さんが、気付けばあたしのすぐそばまで近づいてきていた。
あ、これはやばい。

唇同士が触れて、銀さんの手があたしの着物のような服のようなのを脱がしにかかる。

「史紀を食べてェんだけど」
「…ベタなセリフどーも」

せめて布団でお願いします。
諦め混じりの笑顔で告げれば、銀さんはまたキスをしてあたしを抱き上げた。

「あいつらのニオイなんざ、俺がぜーんぶ消してやっから」
「いっとくけど煙草はセルフだからね」
「んじゃ犯人は沖田くんだな」

話をしながら足でふすまをあけていく銀さん。
行儀悪いな。

到着した寝室で敷いたまんまの布団にすとんとおろされ、すぐに覆い被さってきた銀ちゃんに軽く苦笑。

「ゴムはしてね」
「善処するわ」

そして。
あたしが万事屋に来たのは朝の7時前だったのに、結局朝ご飯を食べたのは9時頃になってしまったのでした、っていうね。




 (俺いつかお前のこと殺しそう)(勘弁してください)

 
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