退屈な遊園地2




場所が遊園地前に変わった。
メンツはさっきと変わらない。

殺気立ってる千果に戦々恐々としながら会話の流れを聞き流す程度に耳に入れる。

千果と同じく殺気立つ松平さんに、ツッコミ入れる土方、栗子ちゃんには俺のような男がーなんて千果の神経逆なでするようなことを口走る近藤さん、その場のノリで流されていく沖田、近藤さんを追っかけてハンターの目つきで走り去っていく千果。
木陰に残されたあたしと土方は、2人同時に深いため息を吐いた。そして煙草を取り出し、火を付ける。
煙を吸って吐いて、とまったく同じ動作をしたところで、土方が口を開いた。

「あいつらが余計な真似すんのを見過ごす訳にはいかねェ…俺らも行くぞ」
「気乗りはしないけど…了解」

テンションガタ落ちな男女2人組が遊園地に入っていくもんだから、チケット売り場のお姉さんに変な顔で見られてしまった。
別にデート直前に喧嘩したとかそういう悲惨なカップルではないんでお姉さん、あのお姉さんそんな顔しないで!そんな「可哀想になぁ…」みたいな顔しないで!!
余計テンション落ちるわ…普通にへこんだ。

そんなこんなで、意気揚々とメリーゴーランドに乗り込んでいった栗子ちゃんとチャラ男の後を追うバカ4人組、の後を追うあたし達。なんだこの連鎖。

「今思ったけど、あの年でメリーゴーランド一緒に乗ってあげるとかチャラ男なかなか良い奴だよね」
「それは俺に対する侮辱ととるがいいか」
「いやいや…くくっ」
「笑ってんじゃねェェェ撃ち殺すぞ!」
「そんな状況で怒られてもぷぷっ笑いがっ…ひぃ、止まらなくなるじゃないですかくはっ」

馬にまたがるあたしに対して、土方はきっとカップルが2人でいちゃいちゃしながら座るんだろう馬車みたいなのに1人でどっかと座っている。これを笑わずして何に笑えと。

とりあえず今回のあたしはSだからこそ打たれ弱いガラスの剣な沖田さえ見られれば満足なんで、個人的に遊園地を楽しむとしよう。
正直栗子ちゃん可愛いとは思うけどそんな興味ないし。可愛いけど。


土方とバカ4人組が栗子ちゃん達を追いかけ回しつつアトラクションを楽しんでいっているのを眺めながら、ぺろりとソフトクリームを舐めた。

「史紀ってジェットコースター苦手じゃなかったっけ?」
「いとこと遊園地行った時に克服した」
「まじでか」

そしてやってきたジェットコースター。テンション上がる。沖田的な意味で。
土方と松平さんの後ろにあたしが座り、更にその後ろに近藤さんと千果が座る。
基本的に最初はのろのろ始まるはずのジェットコースターだけど、ここのは最初からいきなり飛ばすタイプらしく。さすがにちょっとびびった。

んでしばらくは純粋にジェットコースターを楽しんでたんだけど。

「え゙え゙え゙え゙え!!」

聞こえてきた土方と松平さんの絶叫に顔を上げれば吹っ飛んでくる沖田の姿。
とっさに携帯を取り出し、連写モードで撮影ボタンを押す。
うおおお重力に負けるなあたしの左腕ぇぇえ!

「たたた助けてェ!土方コノヤロー!」

途中から動画モードに変えたあたしはいい仕事をしたと思う。

無事にジェットコースターを降り、沖田に肩を貸しながらもほくほくとした顔で携帯を大事にポケットにしまった。コピーしてSDにも保存したし、屯所にあるパソコンにもデータ送信しておいた。あたしってばまじ優秀。

そこでふと近藤さんと千果が降りてきてないことに気が付き、きょろきょろと彼らを捜す。
見つかるには、見つかったけど。

「おい…千果?」

すげえにまにましてる。なんだこいつ。

「…誰にも言うなでございまする」
「言いませんよー!さっ早くトイレ行きましょ!私は着替え買ってきますんで、そんなくよくよしないでください近藤さん!」

そこには、ここぞとばかりに近藤さんの中の自分をランク上げしようと頑張っている千果の姿と、座高がちょっぴり高くなった可哀想な近藤さんがいたのでした。



 (あたしは何も見てない、うん、見てない)

 
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