血祭りの日




血祭りですよ。ブラッディウィークですよ。
あたし生理痛重いんだよまじほんと子宮爆発しねーかな。いや爆発したら痛いな。とりあえず生理なんか来なければいいのに。

しかも今日に限って朝の集会に出ろって土方に言われてた気がする。7時からだっけ。
おいおいもう7時半じゃねーかとっくに集会始まってるよ説教コース一直線だよ。
この連載あたしばっかり説教されすぎだろ。ヘタしたら3分の1くらい説教される話だよおかしいだろ。普通世の中の夢小説の主人公っつったらキャラにちやほや甘やかされるもんじゃねーのかオイこれ。オイコラ。

いやまあンなことはどうでもいいんだよ。別にちやほやされたいわけではないし。でも甘やかされはしたい。厳しいの嫌い。

「絶対ェ怒られる…でも動けん…」

布団の中でうずくまったままお腹をおさえて、起きてから1時間くらいずっとこの体勢だ。たまに寝返りはうってるけど。
鎮痛剤欲しい。ていうかもうむしろ痛覚をなくす薬とか欲しい。そういうの売ってないのどっかの星にあるんじゃないの。

とにかく起きて状況だけでも伝えにいかないと、土方からの説教は免れない。
これ以上説教ばっかされてたらあたしそろそろ泣くぞ。怒られ慣れてないんだよゆとり教育舐めんな。

「うおおお唸れあたしの中の何かァァ」

頑張って起きあがろうとしてみた。

「あっ無理死ぬ」

そして布団の中にリターン。

いやもうこの腹痛は無理だって死ぬって動けないって。
誰か薬と白湯と湯たんぽとホットミルクください…食欲も無いお腹痛い動けないの三重苦だよ自分ではどうしようもねーよ。


もういっそこのまま布団で過ごそうかな。三年寝太郎みたいな感じで行こうかな。
横になってないと死ぬんですみたいな、うんそれもいいかもしれない。

現実逃避をする度に腹からの激痛で現実に引き戻される、っていうのを何度も繰り返していたところで、ドタドタとこっちに向かってくる足音に気付く。
うわーやべー土方直々に説教に来たよやだよもうあたしはこの部屋にいませーん!

スパーンと例のごとく勢いよく開く障子。
その向こうから現れたのは案の定土方だったので、あたしはそっと布団の中に体を潜り込ませた。あたしはこの部屋にいません。

「思いっきりいるじゃねェか!何やってんだお前はァァア!朝会来いっつっただろーが!」
「…すんません…」

布団から顔だけを覗かせてとりあえず謝罪。
床を揺らすなとか大声で喋んな腹に響くだろとか言いたいことは色々あるんだが、いかんせん腹が痛すぎるため口に出す事が出来ない。ちくしょう。

「あれ…史紀さん、顔色悪くないですか?」
「おー…山崎おはよー…」
「おはようございます、じゃなくて!もしかして体調悪いんじゃ…」

土方の背後からひょっこり現れた天使もとい山崎。君の顔を見て少し痛みが和らいだ気がしたよ。気がしただけだけど。
そこで土方もあたしの調子がおかしいことにやっと気付いたらしく、しゃがみ込んであたしの顔色をうかがってくる。

改めてすんませんと謝ってから、お腹がめちゃくちゃ痛くて動くこともままならないことを伝えた。

「変なもんでも食ったんじゃねーのか」
「いやそういうんじゃねーよ」

いるよね腹痛いっつったらすぐトイレ行けばみたいなこと言う奴!ちげーよ生理痛だっつーの!
でも山崎がいる前で生理なんて言えない。さすがにそこまで乙女心捨ててない。

「ああ、史紀なら生理ですぜィ」
「総悟てめえ」

なのに今度は山崎の後ろからひょこっと出てきた沖田に暴露された。思わず名前呼びになったじゃねーかふざけんなバカ沖田。沖田バカ。
ほらもう生理とかはっきり言うから土方固まっちゃったじゃないの。
山崎に至っては顔真っ赤にしてフリーズだよ可愛すぎるわ。嫁にしてやろうかこの!この!!

沖田はフリーズしてる2人をそっちのけに、何かが載ってる盆を持ってあたしの枕元に膝をついた。
ちらと視線を向ければ、薬っぽいものと白湯、おかゆにホットミルク。おお湯たんぽまである。神かおまえ。

「おかゆ食べて、薬飲んでさっさと治してくだせェ。あとこの湯たんぽ腹に乗っけてりゃ多少楽になるだろィ」
「バカとか思ってごめんね沖田…」
「そんなこと思ったんですかィ?じゃあこのホットミルクは俺がもらいまさァ」
「嘘ですすんませんそれが1番欲しいです」

もぞもぞと布団から這い出て、ホットミルクに口を付ける。
あああ生き返る…これさえあれば生きていける…。心なしか痛みも遠のいた気がする。気がするだけだけど。

「史紀の看病なら俺がしやすから、そこのフリーズしてる2人は邪魔なんでさっさと出て行ってくだせェ」
「山崎は残っても」
「即刻出てってくだせェ特に山崎」

あたしからは見えないけど多分ものすごく黒い笑顔を浮かべたんだろう沖田に、フリーズしていた土方と山崎はすたこらと冷や汗を浮かべながら部屋を出て行った。
さらばマイエンジェル…。でも部屋出て行く直前に小さく会釈してくれた山崎可愛かった。心のアルバムに貼り付けとくねその笑顔。

「さ、邪魔者はいなくなったんでさっさと食うもん食って寝やしょうぜ」
「…あんた自分がサボりたかっただけだろ…」
「俺は史紀が心配だから来たんですぜィ!それを、それを…酷いでさァ…っ」

コメントすんのもめんどくせぇ。

とりあえずおかゆを食べられるだけ腹に詰め込み、薬を飲んで寝る体勢に入る。
そんなあたしの邪魔をするかのように沖田は上着を脱いで布団の中に入ってきた。こいつマジで寝るつもりじゃねーかびびるわ。

でも横向いてあたしのお腹を撫でてくれる沖田の手は優しいわ子供体温があったかいわで、なんだこれ文句言えねえ…。
仕方なく、沖田に包まれるようにして眠りについた。

早く薬効いてくれますよーに。



 (実のとこ史紀を独り占めしたかっただけなんですけどねィ)

 
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