コーラとラクガキ




ちゃーっすとコーラの入った缶を手に持ち障子の向こうから現れたのは、いつの間にやら出張から帰ってきていたらしい千果だった。
相変わらず反省文と格闘しているあたしとそれを見守る山崎にコーラを渡して、すとんと向かいに座る。

あたしコーラあんま飲めないんだが。
とりあえず机の端に避けておく。

「謹慎中なんだって?私が近藤さんとラブラブデートしてる間に何があったのさー」
「煉獄館」
「えっまじで!?鬼道丸どうなったん!」
「死んだ」
「まじか…」

簡潔に答えながらもシャーペンを動かす手は止めない。止めたらもう書けなくなることはわかっているからです。

千果は缶のタブをぷしゅっと開け、ごくごくとコーラを喉に流し込んでいく。
よくもまあ炭酸をあんな勢いよく飲めるもんだ。あたしはちびりちびりとしか飲めない。喉がえっえってなる。

ふと思い立ってペンの動きを止め、くるりと山崎の座っている方に体を向ける。
山崎もごくごくとコーラを飲んでいた。

「ちょっと山崎、席外してもらっていい?」
「え、でも…」
「見張りなら私がしとくからさ、何かつまみと史紀が飲める飲み物買ってきてよ」
「…わかりました。絶対、部屋から出ちゃだめですよ」
「わーかってるって」

山崎が怒られるようなことはしないよ、軽く笑いながら告げれば山崎は一礼を残して部屋から去っていった。
その気配が遠ざかるのを確認して、千果へと視線を戻す。

「煉獄館って何巻の話だったか覚えてる?」
「多分、6巻かな」

コーラの缶を机の上に戻し、千果は真剣そうな表情を浮かべる。

なるほど6巻か、言われてみればそんくらいだった気がする。
んで7、8巻辺りで記憶喪失編と星海坊主編?だったような。

「ミツバさんのはまだ結構先だよな」
「…うん、動乱編もまだ先」
「じゃあ当分は何もしなくていっか、良かった」

反省文の隅に沖田とミツバさん、土方が並んでる絵を描きながら、へらりと笑った。

「史紀、大丈夫?」
「なにがー?」
「…んーまあ大丈夫か。山崎と四六時中一緒なんだもんね。もうヤった?」
「ヤってねーよアホか」

一拍の間の後、2人とも声をあげて笑う。

その直後部屋の前を通りかかった近藤さんにセンサーを反応させた千果が勢いよく部屋を飛び出ていき、あたしは近藤さんの絶叫をBGMにしながら、ラクガキを消しゴムで消した。



 (誰も不幸にならない世界なんて無理なんかね)(無理だとしても努力は出来るよ)

 
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