演劇の鑑賞者2




というわけで早速煉獄館に来てみた。
場所はそこら辺の浪人ぶっ飛ばしたら簡単に割り出せました。結構簡単だったね!
…こんな簡単に見つかっていいのやら。

入ってみた煉獄館内では、なるほど胸くそ悪くなるような人斬り合戦が行われていた。
うえ、と小さく舌を出して眉間に皺を寄せる。
闘技場の中では、鬼の面をつけた人とドレッドヘアーの浪人が斬り合いをしている。
あたしが煙草の火をつけたその瞬間に、ドレッドヘアーの浪人の命の火が、消えた。

「鬼道丸、ね」

人斬りという時点で最低な人間だと思う。
けど、利吉にとっては大切な、大好きな父なのだ。

それにあたしは原作を読んで、その人の事情や人となりを知っている。

「頼まれたんだから、やらざるを得ないか」

ポケットの中に入っているビー玉を手のひらの中で転がしながら、高みの見物を決め込んでいる顔の見えない人物を、見上げた。


――…


関係者用の通路で、気絶させた警備の天人の上にあぐらをかいて座り、目的の人物が通るのを待つ。
その間吸った煙草の本数、6本。
待たせすぎだろと思いながら7本目にライターの火を近づけた瞬間。

「やっと来た、遅ぇっての」
「何者だ?お主」

火をつけようとした煙草を箱の中にしまい、天人の上から飛び降りてその人物と向き合う。
にこり、怪しい者じゃないですよと笑った。

「鬼道丸っているじゃないですか、花形の」
「それがどうした?」
「あの人、辞めさせたげてくれません?」

うわ、今こいつ「はあ?何言ってんだコイツ頭大丈夫か」みたいな顔しやがった。殴りたい。

「ちょっと顔見知りでね。こんなとこで働かせたくないのよ」

もう一度、にこりと笑う。
深く傘をかぶったその人は、あたしの顔を見て、そして背後で気を失ってる警備の天人達に目をやった。

「そやつらは、お主が倒したのか?」
「?ええ、まあ」
「ほう…」

何かを思案するように、そしてあたしを値踏みするように、自分の顎に手を当ててじろりとこっちを見てくる。
そしてそいつは、ふむ、と何か自分の中で結論を出したらしく。

「いいだろう、鬼道丸を解放しよう」
「まじで?」

こんなあっさり、上手くいくなんて。
絶対裏があるだろ…。

訝しげな視線を向けるあたしに対して、目の前のこいつはくっくと肩を揺らした。

「その代わり、お主が煉獄館の闘士として戦うんだ。鬼道丸の穴埋めとしてな」
「ま、まじでか」

そんなことしたら100%土方に殺される。
いやでも、うーん…ううーん…。

「…わかった。ただし、5戦だけな」
「ふ…いいだろう」

土方にバレないうちにさっさと終わらせればいっか!うん、そうしよう!
なんとかなるでしょ多分な!



 (見目麗しい女が戦う方が集客力多そうだし)(天導衆のくせに商人みてえな考え方してやがる)

 
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