オカマとお酒
「え、かまっ娘倶楽部?」
暇だったので銀ちゃんと遊ぼうと万事屋に訪れたあたしにお登勢さんが告げたのは、銀ちゃんの行き先とそこに行く羽目になった経緯。
はあんなるほど原作かーと思い、これは何巻くらいの話だったろうかと考えながらかまっ娘倶楽部への道を進む。
道中、千果に連絡することを忘れずに。
辿り着いたかまっ娘倶楽部。
男も女も遊びに来てネ(はあと)って書いてあるけど、ものっそ入りにくい。帰りたい。
店の近くの電柱にもたれ、煙草に火を付ける。
あと5本しかねーや、後で買いにコンビニ行かなきゃ。
吸い終えた煙草を携帯灰皿の中に突っ込んだとこで、連絡していた千果が来た。
「お待たせー」
「おー、じゃあ行くか」
引き戸を開ければ、まさに別世界。
ひええ、なんて顔を引きつらせてしまうのは仕方ないと思う。あ、アゴ美がいる。アゴ代だっけ?
銀ちゃん達見ーっけ、と千果が顔をにやけさせながら舞台を指さす。
確かにそこには、三味線に合わせて微妙な踊りを披露する銀時…いやパー子とヅラ子の姿があった。
どうしよう、意外と可愛い。
「いらっしゃいませぇー!あらお二人?女の子同士なんて珍しいわね!」
顔の輪郭ががっしりとしたお姉さん…お兄さん?お姉さんでいいか、その人に案内される。
舞台から少し離れた席に座り、あたしは日本酒、千果はカルピスサワーを注文した。
「踊り子って席につけてもらえんのかな」
「指名料っていくらかかんだろ…」
お妙さん見にキャバクラ行ったりはしてるけど、やっぱりこういう店のことはよくわからん。
しばらく待って焼酎とカルピスサワーを持ってきてくれた人に、舞台で踊ってる2人を指名できないか聞いたらすごく楽しそうな笑みを向けられた。
あの2人入ったばかりの新人なのよ!今呼んでくるわねぇ!と言い残して彼女…うん、彼女は裏に消える。
指名料ってまじでいくらするんだろう…。
「いらっしゃいませぇ、ご指名ありがとうございます、パー子ですぅ」
「ヅラ子です」
あたし達の背後から聞こえてきた声。
後ろ姿で気付かないもんかね?
今にも腹抱えて笑い転げそうなのを必死に耐えながら、千果と同時にくるりと振り返る。
パー子とヅラ子の表情が固まった。
「ちーっす」
「やほー」
「「お、おおおおまえら何でここに!」」
「お登勢さんに聞いて」
「私は史紀に呼ばれた」
振り向き様ダッシュで逃げようとするパー子達の首根っこを2人してむんずと掴み、満面の笑みを浮かべる。
「まあまあ座りなよ、パー子ちゃんヅラ子ちゃん?」
「とりあえず酌でもしてもらおっか」
「悪代官かお前らは…」
青ざめるヅラ子の隣で、千果はばしばしとパー子の背中を叩いていた。
もう笑いを我慢するのが限界らしい。
「はっはっは良いではないか良いではないかー!」
「あーれー」
お前ら仲良いなおい。
パー子に酒を注いでもらい、軽く飲みながら2人の格好を写メる。
撮影も別料金ってんだからたまったもんじゃないね!別に良いけど!
ったくよー、と拗ねてる風な銀時もといパー子を横目で見ながら、くっくと肩を揺らした。
「そういう格好も似合うじゃん、パー子ちゃんよ」
「んなこと言われても嬉しくねェよ」
「拗ねても可愛いだけだよ?ほら、もっと素直にならないと…」
するり、パー子の顎を指ですくって、目を細めながらくすりとほんの少しだけ口角を上げる。
かあ、と赤くなったパー子の頭を反対の手で撫でれば、「ちょ、史紀…」とパー子が声を漏らした。かーわいい。
「史紀ちゃん攻めキャラすぎー!あっははは!」
「そんなんじゃダメよパー子!もっと客を自分の手のひらの上で転がせるようにならなければな!はっはっは!」
「てめえら酔っぱらってねーで助けろォォオ!!」
(今度その格好で抱いてやろーか?)(バカ言え、攻めは俺だっての)
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