五時を十分ほど過ぎた辺りであがらせてもらい、着替えてから喫煙席に座る二人の元へ向かう。 伊達さんと元親さんは向かい合うようにして座っていたので、少しの逡巡の後に政宗さんの隣へ失礼した。 季節限定のラズベリーソーダとメロンゼリーを注文し、ようやく一息つく。二人にお疲れさんと声をかけてもらい、まったくもって人生はどう転ぶかわからないものだと思いながら返答をした。 「で、飲みに行く?って、どこ行くんですか」 「俺んとこの居酒屋でいいだろ、サービスするぜぇ?」 話を聞けば、元親さんは海鮮メニューに力を入れている居酒屋を経営しているらしい。想像してみれば似合いすぎていて笑いすら出なかった。 ついでとばかりに話された「毛利はパンケーキ屋の店長してるぜ」の方が断然笑えたくらいだ。知将なにやってんだよ。 「Wait,長曾我部。俺は春佳だけをdinnerに誘ったんだ」 「あんだよ、いいだろ別に。春佳だって伊達なんかとタイマンになるよか大勢でわいわいした方が楽しいだろ?」 「どちらかと言えば」 Shit!と伊達さんが唾を吐き捨てかねない勢いでぼやく。口が悪い、そう考えつつも反応はしない。 だってどう考えても伊達さんと二人きりで出掛けるよりは他に人がいた方が良い。それに、私は居酒屋が好きなのである。厳密に言えば居酒屋の唐揚げが好きなのである。お酒もまあ、そこそこいける方だ。 ラーメンもいいけれど、今はどちらかというと居酒屋の気分。 「んじゃ決まりな。家康と毛利と……慶次にも連絡してみっか」 「、でも私がいたら皆さん、落ち着けないんじゃ?完っ全に部外者じゃないですか」 呼べば集まれる範囲内にそれだけのバサラキャラ……だった人たちがいた事に驚きつつ、問いかける。 二人は何故かきょとんとして、そしてすぐに笑いだした。「確かに部外者だな」と続けられ、頷く。私がいなければ仲良い友だち同士の飲み会であっても、私がいるとそうはならない。そして単純に私が居辛い。 「でもお前は、俺達の事を知っている。そうだな、春佳?」 「……、まあ、一応」 伊達さんも確信を持っていたのか。 目を合わせる伊達さんと元親さんに、私は思う。彼らにとって、転生とでも言うべきものをあっさり受け入れている私は、それなりに特異なものとして見えているらしい。普通ならば見間違いか、勘違いか、偶然か。そのどれかで締めくくる筈の夢物語を、そうは受け取らず認識している。 つまるところ私が面白いんだろう。そう結論づけて、肩をすくめた。 「俺達と関わりのねえ人間が、過去の俺達を知っている上で、今の俺達を認めている。そんな奴には会ったことがねえ。だから俺は知りてえんだ、春佳がどんな人間なのか。その瞳に、俺達がどう映っているのかをな」 「はあ、」 そうですか。と、とりあえずこの話は完結させた。 結局居酒屋には、伊達さんと元親さんの他に、家康さんと慶次さんも来ることになったらしい。どうにも明るいメンバーに囲まれてしまったと思う。 ちなみに毛利さんは彼女がいるので来ないそうだった。ちぇと舌打つ元親さん曰く、毛利さんの彼女さんもなかなかに特異な人らしい。詳しくは聞かなかった。元親さん自身もその彼女さんの事を深くは知らないが故である。 六時を過ぎた辺りで店を出て、元親さんの運転する車に乗せてもらう。 運転席に元親さん、そして後部座席に私と伊達さんが座るような図となって、伊達さんは助手席に座ってくれたら良かったのにとうっすら考えた。 しかし、本当によくわからない事になってきた。 ← → 戻 |