なんやかんやで怒濤の二日間が過ぎ、翌日にはすっかり雨も止んでいた。
昼前に起床して朝昼ご飯を食べてから帰省の準備を始め、昼過ぎには家を出た。地元に着くのは夕方くらいになるだろう。結婚式は次の日だから充分に余裕がある。

結婚式の細かい予定や来るらしい人々の話を聞き流しながら、助手席でうとうととしてしまう。やっぱり夜中ロクに眠れなかった所為で、身体が睡眠を欲しているらしい。
とは言っても、佐助さんに運転してもらっているのに、助手席で惰眠を貪るのもどうかと思う。
寝そうになっては頭を振り、寝そうになっては腕を抓っていれば、隣から肩を震わせる気配がした。ちらりと睨む。高速道路を走っているので、視線は合わない。

「眠いんなら寝てもいいよ」
「佐助さんが良くっても私が良くないです」
「変なとこで頑固だねえ」

けらけらと笑われて、ため息を吐く。眠気覚ましになるだろうとスマホをいじりはじめれば、佐助さんも口を噤んだ。
別段趣味が合うわけでもない私と佐助さんの間で、話がずっと続くはずもない。訊いてみたいことはいくらでもあるけれど、口を開くのも億劫なほどに眠かった。


 *


「やぁ……っと、着いたー!」
「それ俺様のセリフだけどね……」

実家まで送ってもらい、外に出てすうっと空気を吸い込む。ハンドルに両腕と顎を乗っけてそんな私を眺める佐助さんに、開いた窓から覗き込むようにして軽く笑みを向けた。

「お疲れ様です、佐助さん。本当にありがとうございました」
「……ま、いいけど。明日は美野里さんとお父さんと来るんでしょ?寝坊しないようにね」

ああ、と一瞬だけ気持ちが沈んだのを取り繕うようにして笑う。
「さすがに予定がある日まで寝坊しませんよ」とやや自傷行為のような発言をして、「じゃあまた明日」と帰っていく佐助さんに頭を下げた。


今は誰もいないだろう実家を見上げて、自分の目がひどく冷めていくのを感じる。
けれどすぐに肩をすくめ、鞄からキーケースを取り出した。


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