沢山の事を考えたり、考えなかったり。そうしていると月日はあっという間に過ぎていく。

石田君と出会ってから、もう半年も経っていた。
そんなに、と思う反面、まだそれだけしか経っていないんだと感じる。半年の間、石田君は私にたくさんの嬉しいと淋しいをくれた。私は、彼に何かが出来たんだろうか。

わからない。

でも、これからもきっと、石田君と一緒にいられるだろうと思うから。
少しずつ、少しずつ、石田君にはありがとうを返していきたい。そうして、もっと石田君を知ることができたら良いと思う。

私はきっと、彼の望む「みこと様」にはなれないけれど、それでも。
私自身として、彼に歩み寄れたらいいと思う。石田君に、私自身を好きになってもらえたらいいと、思う。

それは、わがままな願いなんだろうか。



――…



私には嫌いなものがあった。たくさんのものを、私は嫌っていた。

震えを抱いたまま伸ばされる手。私の名前に付けられる敬称。線引きをされたように感じる口調。月明かりのような髪。私に情愛を向けてはくれない瞳。

全部、全部、嫌いだった。それは私が私だから得られるものではなかったから。
それでも私は、それら全てを愛しんだ。私が愛したものも結局、私を慈しむ彼、という欠片でしかなかったから。私はその破片を集めて、大切に愛おしむことしかできなかった。
それでよかった。そう、思っていたかった。

私は自分の欲に正直だった。我慢なんてしていたところで、何の意味も成さない。
けれど私には力がなかった。自分の欲を満たすに足りないそれを、補ってくれたのはきっと彼だった。
私が望むものを、全て与えてくれた。ただひとつを除いて。
それで、良かった。そう思っていたはずだった。


姫でしか在れない私。左腕という存在の三成。
自分の欲に正直な私。己の欲を持たない三成。
歪んでしまった私。いつだって真っ直ぐな三成。
嘘に憑かれてしまった私と、嘘を憎んでしまった三成。

曲線と直線は、重なることは出来ても、一致することはない。


私の呪いは、誰に向けられたものだったのだろう。


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